イトウさんのちょっとためになる農業情報

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イトウさんのちょっとためになる農業情報『アブラムシ』 #3

※こちらの記事はアグリノート公式Facebookページに掲載した連載記事を、
アーカイブとして転載したものです。

【2017/6/29更新:第六回】

こんにちは。アグリノートサポートチームです。

「連載読んでますよ!」とお声がけいただき、ほくほく(*´艸`*)しております。
イトウさんもほくほくしていると思います。

コラム連載6回目の本日は、
元普及指導員・イトウさんの“ちょっとためになる農業情報”
『アブラムシ』のお話の第3回、防除のお話の続きをお届けします。

光や色、農薬による防除の次は、天敵による防除のお話です。
アブラムシの“敵”とは!?

 

天敵によるアブラムシ防除

アブラムシは非常に高い増殖力を持っていますが、それでも世の中がアブラムシだらけにならないのはアブラムシには天敵も多いからです。そして、上手くやれば天敵の力を利用してアブラムシを防除することもできます。

 

■ 天敵昆虫が活躍できる条件を整える

屋外には天敵が居るのですが、必ずしもほ場で上手く増えてくれない理由の一つに植生が単純であるというものがあります。単一の植物だけがある状態は必ずしも天敵の生息に好適ではありません。そこで、ほ場の内外に天敵の定着に適した植物を植えると有効な場合があります。

例えばソルゴーはアブラムシ類の各種の天敵が発生しやすいので、ナスのほ場の周囲に定植することで土着天敵の活躍が期待できます。他にもスイートアリッサムやソバ、オクラなどが土着天敵の定着と温存に有効であるとして普及や研究が進んでいます。近年の研究によってマニュアルも充実してきているので、天敵利用に取り組んでみたいという方はまずそれらを参考にしてみると良いでしょう。

 

■ 天敵に影響の少ない農薬を選ぶ

天敵を利用している場合でも農薬を使わざるを得ない場面が出てくることがあります。その際には天敵に影響のない農薬を選択する必要があります。殺虫剤の中には選択性農薬といって、特定の昆虫種にのみ特異的に作用するものがあります。そのようなものを上手く利用することで害虫のみを殺すことができます。例えば昆虫のホルモン様の作用によって脱皮などの生育機能を撹乱して殺虫作用を示すIGR剤や、吸汁阻害剤のように特定の行動を阻害して殺虫作用を示す薬剤には選択性の高いものが多くあります。

一方、有機リンやカーバメート、合成ピレスロイドといった系統の薬剤は幅広い昆虫種に作用するため天敵も殺してしまいます。このような薬剤は非選択性殺虫剤と呼びます。非選択性殺虫剤の中には数ヶ月以上経過しても天敵に影響するような薬もありますから、農薬の選定には特に注意が必要です。過去の農薬使用状況によっては天敵利用を断念したほうが良い場合もあります。

農薬の天敵に対する影響は、たとえば日本生物防除協議会のWebサイトで確認することができます。
(参考:[Japan BioControl Association] http://www.biocontrol.jp/ )

農薬選択にあたってはこのような情報を参考にすると良いでしょう。

 

■ 天敵昆虫を放飼して使う

露地では環境を整えてやるだけでもかなりの防除効果が期待できますが、施設では屋外から天敵が飛び込んでくることがあまり期待できないので(そもそも虫がそんなに簡単に施設に入ってくるのは問題です)、人為的な放飼が有効な場合があります。

天敵を放飼して使う場合は、害虫密度が低いうちに放飼することが重要です。あまり害虫密度が高い場合は、天敵に影響の無い農薬で防除を行ってから放飼することも検討しましょう。アブラムシを対象とした天敵農薬としてはアブラバチとテントウムシが普及しています。

なお、天敵も農薬の一種です。市販の天敵を利用する場合は使用基準を守りましょう。

 

■■ アブラバチ、アブラコバチ

アブラバチというのはアブラムシに規制するコマユバチ科の寄生蜂を指す呼び方で、いくつかの種が商品科されています。また、ツヤコバチ科に属する寄生蜂であるアブラコバチも商品化されています。

アブラバチの一種

アブラバチに寄生されたアブラムシは丸く肥大し、体色が黒色や光沢を帯びた乳白色になります。アブラコバチの場合は丸くはならず体色が黒くなります。この状態を「マミー」と呼びます。アブラバチやアブラコバチは屋外に多く居るので、露地作目などでは自然にマミーが増えてきてアブラムシが抑圧される場合もあります。アブラムシの防除判断の前にマミーが増えてきていないか確認してみましょう。

アブラムシマミー

寄生蜂はアブラムシが居なければ絶えてしまいますが、アブラムシ発生前から待機させておかないと十分な効果が得られません。害虫アブラムシ発生前から寄生蜂を待機させておく手法として、バンカー法というものがあります。これは対象作物を加害しないアブラムシ(ムギクビレアブラムシなど)を対象作物以外の植物(麦など)に定着させておいて、そこで寄生蜂を維持する手法です。バンカー法については農研機構が詳しいマニュアルを作成・公開していますので、挑戦してみようという方は参考にしてみるとよいでしょう。

 

■■ テントウムシ

アブラムシ防除目的ではナミテントウが古くから使われていましたが、すぐに飛んでしまい定着しにくいという欠点がありました。そこで、飛びにくい性質を持つテントウムシを選抜した「飛ばないテントウムシ」(商品名:テントップ)や、もともと定着性が高いヒメカメノコテントウ(商品名:カメノコS)などが近年製品化されています。テントウムシはアブラバチに比べると捕食量が多いので、即効性に期待できます。

ヒメカメノコテントウ

ヒメカメノコテントウ幼虫

 

■■ 微生物農薬を使う

害虫に対して感染する微生物を製剤化した農薬、というものがいくつかあります。そのなかでアブラムシに登録のあるものとしては、ボーベリア バシアーナ乳剤(商品名:ボタニガードES)、ペキロマイセス テヌイペス乳剤(商品名:ゴッツA)などがあります。

生き物を使うという意味では天敵農薬の一種ですが、微生物農薬は通常の農薬と同じように散布して使えるので手軽です。微生物農薬については次回詳しく紹介します。

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≪ 参考文献 ≫
– [露地ナス栽培における インセクタリープランツ導入マニュアル]http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cmsdata/b/8/5/b85f5aefa37a71b6ed1b2963ced4062d.pdf

– [アブラムシ対策用「バンカー法」技術マニュアル 2014年改訂版(生産者・技術者用) | 農研機構]http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/pamphlet/tech-pamph/051982.html

– [飛ばないナミテントウ利用マニュアル – 農研機構]http://www.naro.affrc.go.jp/org/warc/tobaten/image/20150225/warc_manual_tobanai_namitento_usetechnical.pdf