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イトウさんのちょっとためになる農業情報 第12回『病害虫の防除』

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※こちらの記事はアグリノート公式Facebookページに掲載した連載記事を、アーカイブとして転載したものです。

【2017/8/24更新:第十二回】

こんにちは。アグリノートサポートチームです。

コラム連載12回目の本日は、病害虫の防除 のお話しです。
前回は初心に戻り「病害虫」とは何なのか、「農薬」とは何なのかを振り返ってみました。
さて今回は?

 

病害虫の防除

そもそも農作物にはなぜ病害虫が発生してしまうのでしょうか?
自然環境のなかでは特定の病害虫が多発するということは、全く無い訳ではありませんが、農作物で見られるほど頻繁には起こりません。

農業をするということは少なからず自然環境を改変するということなので、多くの生き物は農地の環境に適応できず生存が難しくなります。
しかし、もし農地に適応でき、農作物を餌にできる生き物がいたとすると、豊富に餌があり天敵も少ない環境でその生物は爆発的に増殖し、「病害虫」になってしまう可能性があります。
実際、病原菌や昆虫のなかで病害虫として問題になっている種類は全体に比べればごく一部の種にすぎません。

特定の昆虫や病原菌が「病害虫」となる上で重要な要因の一つは密度です。
どのような生き物でも限度を超えて増殖すれば病害虫になりえます。
逆に言えば、多少作物を齧られたとしても経済的な被害が生じない程度の密度であれば問題ではないということです。
しかし、圃場内に天敵が少なかったりすると、被害が出る限度の密度を簡単に超えてしまう場合があります。

例えばチョウ目の重要害虫であるハスモンヨトウは、過去の研究によれば自然条件下での死亡率は実に99.8~100%に達し、そのうち68~89%が天敵による捕食が原因とされています。
ハスモンヨトウは自然条件下ではほとんど死亡してしまうため、一度に数百の卵を卵塊として生みます。
これがみな元気に生育してしまったら、農作物に大きな被害が出るであろうことは容易に想像できるでしょう。

02_卵塊から孵化したハスモンヨトウの幼虫

4つの防除法

病害虫の防除方法は大きく4つに分けることができます。

一つ目は耕種的防除法です。
これは病害虫と作物との関係に基づき、病気や害虫が発生しにくい環境を作るやりかたです。
具体的には抵抗性品種を利用したり、栽培時期をずらしたり、輪作をおこなったり、という方法が該当します。

二つ目は物理的防除法です。
これは防虫ネットなどで害虫の侵入を遮断したり、光や熱などを利用した防除が含まれます。
特定の波長の光を使って昆虫を誘引したり行動を撹乱したりする方法や、熱を利用して種子や土壌を消毒する方法などです。

三つ目は生物的防除法です。
これは生物同士の相互関係を利用して病害虫を防除する方法で、わかりやすいのは害虫を捕食するような天敵を利用するやり方です。
他にも拮抗微生物を利用して病原菌を防除したり、対抗植物を利用してセンチュウを防除したりするやり方も含まれます。

最後は化学的防除法です。
これは要するに農薬を使った防除法です。ただし農薬には天敵も含まれますから、天敵以外の農薬ということになります。
殺虫剤や殺菌剤だけでなく、忌避剤や交信撹乱剤のように間接的に作用するものも含まれます。

 


≪ 参考 ≫
-[ハスモンヨトウの生命表と生物的死亡要因の評価]
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjaez1957/16/4/16_4_205/_article/-char/ja/