イトウさんのちょっとためになる農業情報

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イトウさんのちょっとためになる農業情報 第22回『湿度と温度』

イトウさんのちょっとためになる農業情報

※こちらの記事はアグリノート公式Facebookページに掲載した連載記事を、アーカイブとして転載したものです。

【2017/12/14更新:第二十二回】

元普及指導員・イトウさんの“ちょっとためになる農業情報” 第22回の今回からは新テーマがスタートします。
新テーマは『湿度と温度』。
植物にとってもっとも大切な管理項目である「湿度」と「温度」について、数回にわたってご案内しますので、どうぞご期待ください。

相対湿度

湿度は「空気の湿り具合」を表す指標ですが、実はその表し方は1通りではありません。

例えば天気予報では%のついた「湿度」が使われています。普段最も目にする機会が多いのはこの「湿度」ではないでしょうか。
これは正確には相対湿度と呼ばれるものです。相対湿度は日常的に頻繁に使用される割には定義が複雑です。

適当な教科書で相対湿度の定義を確認してみると、おそらく次のような定義が出て来るはずです。

 

『湿り空気の水蒸気圧eと、それと同じ温度の飽和水蒸気圧esとの割合(e/es × 100)』

 

アーカイブ22_相対湿度

相対湿度の定義を知りたいだけなのに新しい単語が出てきてしまいました。順番に確認していきましょう。

 

湿り空気

これは「普通の空気」のことだと思ってください。空気というのは様々な種類のガスが混合されたものです。
水蒸気を除くと、その大半は窒素(体積比で78.08)、酸素(20.95 %)、アルゴン(0.93 %)、二酸化炭素(0.03~0.04 %)の4種類で占められており、これらの割合はそれほど大きく変化することはありません。

しかし、水蒸気だけは事情が別で、0?4%という(他のガスに比べると)比較的広い範囲で変動します。
水蒸気の割合次第で、空気の重さなども変化してしまいます。
そのため、何か計算をするときに、便宜的に水蒸気が入っていないものと考えてしまう、ということがよくあります。
そういう空気を「乾き空気」と呼びます。
「湿り空気」というのは普通の空気のことを「乾き空気ではないよ」というのを強調して言っているだけです。
回転寿司ができて以来、普通のお寿司屋さんを「回らない寿司」と呼んでいるようなものです。

 

アーカイブ22_湿り空気

 

水蒸気圧

日常生活の中ではなかなか感じることができませんが、空気も重さを持った物質なので、空気による圧力、というものがあります。これを気圧と呼びます。

そして、空気はさまざまな気体が混合されたものなので、気圧はさまざまな気体が分担して受け持っています。
それぞれの気体が受け持つ圧力の大きさを「分圧」と呼びます。
空気の中に含まれる酸素や窒素や二酸化炭素が、それぞれ分担して気圧を受け持っているわけです。

そして、「水蒸気圧」というのは水蒸気の分圧のことを指しています。
若干省略されている感じがしますが、きちんと「水蒸気分圧」と呼ぶ場合もあります。

分圧の大きさは空気中でその気体が占める割合に比例するので、水蒸気圧の大きさは空気に含まれている水蒸気の量を示す指標にもなります。
水蒸気圧の高い空気ほど、水蒸気を沢山含んでいるということになります。

つまり、水蒸気圧も一種の「湿度」なのです。
ではなぜ水蒸気圧ではなく相対湿度の方が湿度の基準としてよく使われるのかというと、それは空気が水蒸気を含むことが出来る量の「上限」に関係があります。

 

アーカイブ22_水蒸気圧

 

飽和水蒸気圧

空気はいくらでも水蒸気を含むことができるわけではなく、上限があります。
上限の水蒸気量に対応する水蒸気圧を「飽和水蒸気圧」と呼びます。

水蒸気圧と飽和水蒸気圧の差が大きければ空気は乾いていて、小さければ空気は湿っていると言えます。

そこで「飽和水蒸気圧に対して現在の水蒸気圧がどれくらいなのか」がパッと分かるような指標があると便利なのでは?とお気づきの方もいらっしゃるでしょう。
それが冒頭にお話しした相対湿度です。

相対湿度というのは空気が水蒸気を含む能力の限界に対して、「相対的に」どれだけの水蒸気が含まれているのかを示した指標です。

実はこの飽和水蒸気圧は気温によって値が変わります。次回はその点を解説します。

 

アーカイブ22_飽和水蒸気圧

 


≪参考文献≫
– 上田政文(2000) 『湿度と蒸発』コロナ社
– 日本農業気象学会編 (1997) 『新訂 農業気象の測器と測定法』農業技術協会