イトウさんのちょっとためになる農業情報

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イトウさんのちょっとためになる農業情報 第27回『ソースとシンク』 #前編

※こちらの記事はアグリノート公式Facebookページに掲載した連載記事を、アーカイブとして転載したものです。

【2018/02/22更新:第二十六回】

湿度のお話しをお届けしております、元普及指導員・イトウさんの“ちょっとためになる農業情報”。
今回は、前回から引き続き転流のお話しです。

ソースとシンク

ソースとシンクの関係は必ずしも固定されたものではなくて、あくまで養分の供給元がソース、受取先がシンクというだけです。なので、若い葉が他の葉の光合成産物を受け取って生育しているならそれはシンクですし、その葉が生育して十分に光合成能力が高くなったらソースになります。

そして、シンクの間には強弱があります。果実も若い葉も光合成産物を受け取りますが、多くの場合は果実のほうがより多くの光合成産物を受け取ります。これは、果実と葉の間にシンクの強さ(シンク強度)の違いがあるためと考えられています。光合成産物はシンク強度のバランスに応じて分配されるのです。

 

ソースとシンク前編01

 

ところで、植物体全体でみるとソースは無限にあるわけではありません。したがって、シンクが沢山あって競合していると、例えば果実の糖度が上がらないなどの現象が発生します。これはシンクの量とバランスを適当に調整してやれば解決できそうです。

果菜類や果樹では果実品質を高めるなどの目的のために摘果(あるいは摘花)という作業を行う場合があります。なぜ摘果で果実品質が高まるかというと、全体としてのシンクの量を制限することで、個々の果実への光合成産物の分配量を増やすことができるからです。

ソースが不足するときの対処 – シンクサイズを制限する

果実のシンク強度というのは基本的には植物体の他の部位よりも大きいので(各種のイモ類の様に、茎や根の一部を肥大させ、そこに貯蔵するものもあります)、天候不順などで十分な光合成が期待できない場合は、強めに摘果をしておくと光合成産物を茎葉に回す余裕が増え、生育を安定させられる場合があります。生育と収穫が同時並行で進行する果菜類などでは、生育状況や天候に応じて摘果の強度を調整することも大切です。

また以前も取り上げましたが、若い葉もシンクの一つであるという考えから、トマトでは果実への分配を増やすために果房裏の葉を若いうちに摘除するという作業が行われる場合があります。葉を摘除することで葉の合計シンクサイズが減り、果実への分配が相対的に増加します。ただし、葉の摘除は当然ですがソースの減少にも繋がります。若い葉を摘除する場合は、通常よりも下葉の摘葉を遅らせるなど、合計葉面積が減らないような配慮が必要です。また摘除は光合成産物が分配される前に行わなければ意味がありません。若い葉を摘除する場合は、完全展開時のサイズの半分に達する前に行う必要があります。

 

ソースとシンク前編02

 


≪参考文献≫
– L.テイツ, E.ザイガー. 植物生理学. 第3版, 培風館, 2004.
– E.フーヴェリンク, T.キールケルス. オランダ最新研究 環境制御のための植物生理. 農山漁村文化協会, 2017
– Murashige, T. and Skoog, F. A Revised Medium for Rapid Growth and Bio Assays with Tobacco Tissue Cultures. Physiologia Plantarum. 1962, vol. 15, p. 473-497