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イトウさんのちょっとためになる農業情報 第13回『耕種的防除法-環境の改善-』

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※こちらの記事はアグリノート公式Facebookページに掲載した連載記事を、アーカイブとして転載したものです。

【2017/8/31更新:第十三回】

こんにちは。アグリノートサポートチームです。

コラム連載13回目の本日は、耕種的防除法 のお話しです。
前回ご紹介した4つの防除法のひとつ目『耕種的防除法』について、具体的なお話しに入ります。

 

耕種的防除法

耕種的防除法は作物と病害虫の間の関係に基づいて環境を改善し、病害虫の発生しにくい栽培環境とし、病害虫を予防するといった考え方に基づいています。

まずは病気についての耕種的防除法について見ていきましょう。

 

病気はなぜ発生するのか?

病気がなぜ発生するのか?を説明する上でよく使われる概念に「主因」「素因」「誘因」というものがあります。病気はこれら3つの要素がそろったときに発生する、という考え方です。

「主因」とは病気を引き起こす病原体を指します。
植物では病原体以外の要因(養分欠乏や気温の高低)で引き起こされる症状は「生理障害」と呼ぶ場合が多いので、この点もついでに覚えておきましょう。植物の病気といえば糸状菌や細菌やウイルスなどの病原体によって引き起こされるものを指します。

「素因」とは病気になりうる植物のことを指します。
当然ですが、病原体がいても感染する植物がいなければ病気にはなりません。例えば抵抗性品種の導入は素因を改善する対策であると考えることができます。

「誘因」とは病気の発生に関連する環境条件です。
温湿度や土壌条件などによって病気は出やすくも出にくくもなります。

耕種的防除は主に素因と誘引に働きかける防除法を指します。間接的に病気が発生しにくい条件を整えていくという戦略ですね。

主因誘因素因の関係図

栽培環境を改善する – 温湿度制御

植物の病原体の中で最も種類が多いのは糸状菌です。そして、多くの病原糸状菌は植物体に侵入するためには水滴を必要とします。したがって、病気の予防を考える上では「濡れ」の発生をいかに抑えるかがポイントになってきます。

「濡れ」は植物体温が気温より低い状態になると発生しやすくなります。冷たい飲み物が入ったコップに水滴がつくのと同じ理由です。ハウスなどでは日の出後急激に気温が上がりやすいので、換気などによって温度変化を緩やかにし、植物体温と気温の間に差が生じないように注意しましょう。

 

栽培環境を改善する – 肥培管理

植物体の栄養条件も病気の発生を左右します。例えば窒素は生育だけでなく病気の発生に影響しやすい肥料成分です。窒素が必要以上に多いと、植物は軟弱に生育したり過繁茂になったりして病気が発生しやすくなります。きゅうりのべと病の様に窒素欠乏で顕著に発生しやすくなるものもあります。肥料成分は特定の要素の過不足が生じないように施すことが大切です。

土壌病害に対してはpHも重要な要素です。例えばジャガイモのそうか病はpHが高いと出やすくなるので、pHを下げると被害が軽減できます。一方、アブラナ科野菜の根こぶ病はpHが低いと発生しやすくなるので、pHを上げる対策がとられます。pHが上がると微量要素が不溶化して欠乏症が出やすくなりますが、微量要素を豊富に含む資材によりpHを矯正することでリスクを回避する技術も開発されています(下記参考URLをご参考ください)。

 


≪ 参考 ≫
-[転炉スラグによる土壌pH矯正を核とした土壌伝染性フザリウム病の被害軽減技術 -研究成果集-|農研機構]
http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/laboratory/tarc/material/056110.html