イトウさんのちょっとためになる農業情報

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イトウさんのちょっとためになる農業情報 第3回『マルチ』 #3

イトウさんのちょっとためになる農業情報

※こちらの記事はアグリノート公式Facebookページに掲載した連載記事を、
アーカイブとして転載したものです。

 

【2017/6/8更新:第三回】

こんにちは。アグリノートサポートチームです。

コラム連載3回目の本日は、元普及指導員・イトウさんの
“ちょっとためになる農業情報” 『マルチ』 の第3回をお届けします。

マルチの最終回となる第3回は、「マルチの選び方」のお話しです。

 

マルチの選び方

今回はマルチの選び方です。

 

■■ 地温を上げたい・下げたい

条件にもよりますが、地温上昇効果は概ね次のような順番です。

  「透明>緑>黒>シルバー>白黒≧無被覆>紙・有機物マルチ」

ポイントは地面に光が届くかどうかという点です。

シルバーは光を反射しますが、一部は透過しますし、
蒸発によって気化熱が奪われるのを抑制するので、無被覆より地温が高くなります。

白黒マルチは反射+吸収で地面への光の到達をかなり抑えるので、
地温上昇抑制効果が高く、条件によっては無被覆と同等程度に地温を抑える効果があります。
また、黒面を上にすれば黒マルチに近い保温効果が得られるので、
作期の短い小型葉菜類では冬場は裏返して使うというのもアリです。

紙や敷わらなどの有機物マルチは蒸発を妨げずに太陽光を遮るので、地温上昇抑制効果に優れます。
春先に敷わらのタイミングが早すぎると、地温抑制により生育が遅れる場合もあるので注意しましょう。

マルチの色による地温の変化

 

■■ 雑草をおさえたい

雑草の発生を抑えるためには光を遮る必要があるので、
基本的には抑草効果は地温上昇効果とトレードオフの関係にあります。

  「黒=白黒>シルバー≧緑>透明>無被覆」

最も抑草効果が高いのは黒マルチです。
シルバーは若干光を通しますから、そこそこ雑草は生えます。
緑は製品にもよりますが、黒と無被覆の中間程度の効果です。
完全に抑えることはできませんが、ある程度雑草の発芽生育を抑制できます。

透明は既に土壌中に存在している種子に対してはあまり効果がありませんが、
新たに種子が飛来するのを妨げるので、無被覆に比べれば多少は抑草効果があります。
また、他のマルチも同様ですが、連用することで埋土種子が減り、
無被覆に比べて雑草が生えにくくなります。

マルチ#3

 

■■ 病害虫をおさえたい

泥跳ね防止や湿度低下により、病害発生を抑制できるという点は以前お話しましたが、
土壌病害では高温で発生しやすいもの、低温で発生しやすいものがあるので、
ターゲットにする病気の特性に合わせた選択をしましょう。
例えばトマトの青枯病は地温が高くなると発生しやすくなるため、
シルバーマルチや敷わらによって地温上昇を抑えると効果的です。

また、光の反射は一部の害虫に対して忌避効果があるので、
シルバーマルチやシルバーのストライプが入った黒マルチで効果が得られます。
なお、黒マルチや透明マルチでも光の反射はあるので、
シルバーには劣りますが無被覆よりは高い防除効果があります。

 

■■ コストをおさえたい

一般的に黒と透明は安価です。白黒や銀黒は概ね倍くらいの価格です。
シルバーは商品によりますが、反射率を高めたものでは白黒よりもさらに高価なものもあります。
しかし、白黒やシルバーマルチは値段が高い分、それぞれ独特の効果があります。

例えばシルバーマルチにすることによって農薬の散布回数を減らせて、
果実の品質も上がるのであれば、マルチの差額分以上に収益が増えるかもしれません。
逆に言えばそのような効果が狙えない場合に高価なマルチを使っても勿体無いだけです。
コストはトータルで考えなければいけません。
高価な資材を使う場合は漠然と使用するのではなく、
投資した金額を取り戻せるのかを常に意識して判断するようにしましょう。

 


≪参考文献≫
– [畑地の埋土種子量に対するフィルムマルチの影響]

https://www.jstage.jst.go.jp/article/weed1962/44/1/44_1_77/_article/-char/ja/