イトウさんのちょっとためになる農業情報

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イトウさんのちょっとためになる農業情報 第16回『生物的防除法-土着天敵の利用の注意点-』

※こちらの記事はアグリノート公式Facebookページに掲載した連載記事を、アーカイブとして転載したものです。

【2017/9/21更新:第十六回】

こんにちは。アグリノートサポートチームです。

コラム連載16回目の本日は、前回に引き続き生物的防除についてのお話しです。
注目の『土着天敵』について、使うには気をつけなければならないポイントがあるようです。

 

土着天敵利用時の注意点

土着天敵を利用するためには、まず土着天敵を入手しなければなりません。
それには自分で捕まえるか、既に利用している生産者から譲渡を受けるかの2通りの方法があります。地域によっては販売されている場合もあります。

 

土着天敵の入手と増殖についての注意事項

地域で捕獲した天敵は特定農薬に指定されていますので、農薬として害虫防除に使用することができます。しかし、捕獲した上で増殖させたり譲渡・販売したりする場合には、自然環境や生態系への悪影響を避けるという観点から、一定のルールが設定されています。

特に土着天敵を販売するにあたっては都道府県知事に対する農薬販売届の提出が求められますが、「販売」には無償の譲渡も含まれますのでご注意ください。
土着天敵を安定的に活用するためには、地域のグループや仲間内で譲り合いができるようになっておくことも大切です。土着天敵を利用するならまず農薬販売届を提出しておくと良いでしょう。
具体的な提出先や提出書類はお住いの都道府県へご確認ください。

 

農薬の選択

敵を利用していても、天敵が捕食しない害虫が出たとか、捕食量以上に害虫が増えてしまったとか、病気が発生したなどの理由で農薬を使用せざるを得ない場合もあります。その際は極力天敵に影響しない農薬を選定することが重要です。

土着天敵に対する農薬の影響は必ずしも十分な情報があるわけではありませんが、市販の天敵についての情報や既存の利用事例を参考にするとよいでしょう。なお、タバコカスミカメについては国が中心となったプロジェクトで詳しい調査が行われており、前回紹介したマニュアル に結果が記載されています。

一般的には、有機リンや合成ピレスロイド、カーバメートなどの作用範囲の広い農薬は天敵への影響も大きく、BT剤やIGR剤などの特定の昆虫にピンポイントで作用する農薬は影響が少ない傾向にあります。有機リン系の農薬などは、散布後2~3ヶ月経過しても影響が残る場合があります。天敵を利用する体系ではこのような農薬は基本的には使用できないと考えましょう。

 

他の害虫への対処

天敵を使用し始めて農薬の使用回数・量が減ると、今まで気にしていなかった虫が害虫として表面化してくる場合があります。

例えばナスではここ10年くらいのあいだにナスコナカイガラムシというカイガラムシが見られるようになりました。これは慣行の防除体系ではあまり発生が見られない害虫で、減農薬などの栽培体系で発生しやすい害虫です。

06_ナスに発生したカイガラムシ

ほかにも「アザミウマを対象とした天敵を利用し始めたらアブラムシが出てきてしまった!」といったことは往々にして起こります。天敵を利用し始めて間もないころは、普段以上にほ場内に目を光らせるようにしましょう。

害虫が発生した場合に農薬を散布するのか、さらに天敵を導入するのかはよく検討する必要があります。
農薬と一口に言っても成分も作用も色々で、天敵もろとも殺してしまうようなものもあれば、単体では防除効果が低くても天敵の働きを補うには十分という場合もあります。大切なのは適切な技術を適切に組み合わせるということです。

 


≪参考文献≫
– [天敵等に対する農薬の影響目安 of 日本生物防除協議会 Japan BioControl Association]
http://www.biocontrol.jp/Tenteki.html
-[土着天敵を活用する害虫管理 最新技術集 / 土着天敵を活用する害虫管理技術 事例集 | 農研機構]
http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/pub2016_or_later/laboratory/narc/manual/069415.html
-[特定農薬(特定防除資材)として指定された天敵の留意事項について | 農林水産省]
http://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_tokutei/pdf/h26tokuteinouyaku_tennteki.pdf