イトウさんのちょっとためになる農業情報

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イトウさんのちょっとためになる農業情報 第24回『2種類の「飽差」』

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※こちらの記事はアグリノート公式Facebookページに掲載した連載記事を、アーカイブとして転載したものです。

【2018/01/11更新:第二十四回】

新年最初のコラムの日の本日は、昨年から引き続き、元普及指導員・イトウさんの“ちょっとためになる農業情報”、湿度のお話しの3回目をお届けします。

今回は、前回の「飽差」についてのお話しのなかで登場した、飽差の単位の違いについて解説していただきました。
是非スライドと合わせてご覧ください。

2種類の「飽差」

前回、さも当然のように飽差の単位としてヘクトパスカル[hPa]を使いました。
しかし、最近の農業関係雑誌等に登場する飽差は単位が[g/m3]になっているものが多いと思います。

実は「飽差」と呼ばれるものには、単位が[hPa]のものと[g/m3]のものがあります。
(他に[g/kg]のものがありますがあまり使われないので今回は省略します)

 

飽差の単位はいろいろある

 

かつて日本の農学分野では[hPa]の飽差を使うことが多かったのですが、近年は[g/m3]の出番が多くなってきています。
いずれの飽差も値が大きいほど乾燥していることを示します。

 

VPDの飽差

 

[g/m3]の飽差

空気中の水蒸気の量を表す方法として、水蒸気圧を使うもの以外に、実際の水蒸気の量にもとづいた「絶対湿度」というものがあります。これは1立方メートルの空気中に何gの水が含まれているのかを表したものです。そして、飽和水蒸気圧に対応する絶対湿度と、現在の絶対湿度の差を表したものが[g/m3]の飽差です。

圧力で言われるよりも、「1m3の空気にあと5gの水を含むことができる」と言われたほうがイメージがしやすいのではないでしょうか。そのような理由もあり、こちらの飽差が流行しているようです。

ちなみに日本語ではどちらも「飽差」なのですが、英語名は異なります。

・[hPa]の飽差  Vapour Pressure Deficit
・[g/m3]の飽差  Humidity Deficit

 

HDの飽差

 

飽差と飽差の関係

似たような意味の2種類の飽差ですが、幸いなことに数字も似たようなものです。
とはいえ若干の違いはあります。

常温(5~35℃)の範囲では、値はhPaの方が大きく、g/m3の1.3~1.4倍程度の値になります(正確な倍率は温度次第です)。

飽差を見るときには、使われている単位が何なのか、少しだけ注意してみてください。

 

VPDとHDの関係

 

飽差[g/m3]の計算

前回、単位が[hPa]の飽差表をご紹介しました。
そこで今回は単位を[g/m3]として再算したもの作成しましたので、参考にしてみてください。

 

飽差表②HD版

 


≪参考文献≫
– 上田政文(2000) 『湿度と蒸発』 コロナ社
– 日本農業気象学会編 (1997) 『新訂 農業気象の測器と測定法』 農業技術協会
– G.S.Campbell, J.M.Norman著、久米篤ら訳(2010)『生物環境物理学の基礎』 森北出版株式会社