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イトウさんのちょっとためになる農業情報 第33回『アザミウマとは何か』

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※こちらの記事はアグリノート公式Facebookページに掲載した連載記事を、アーカイブとして転載したものです。

【2018/04/05更新:第三十三回】

本日の『元普及指導員・イトウさんの“ちょっとためになる農業情報”』は、温かくなってきたら要注意!な『アザミウマ』のお話しです。

アザミウマとは何か

「アザミウマ」はアザミウマ目に属する昆虫グループのことを指します。
「アザミウマをアザミウマと呼ぶ」では何のことやらという感じですが、アザミウマ目は、かつては総翅目と呼ばれていました。
翅は「はね」のことで、総には「ふさ」という意味があります。
この名前が表すように、アザミウマの翅は棒に毛が生えたふさ状の形をしています。

このような翅で飛ぶことが出来るのは不思議な感じがしますね。
アザミウマは体長1〜3mm程度の非常に小さな昆虫で、このサイズでは空気の粘性が無視できない大きさとなります。
そうするとどうなるかというと、翅の毛と毛の間を空気が容易には流れなくなります。
つまり、ふさ状の翅があたかも膜状の翅であるかのように振る舞うということです。

 

#33-1アザミウマの成虫

 

害虫としてのアザミウマ

アザミウマの仲間の多くは植物や菌類を餌とします(中には肉食のものもいます)。
そのため、ミナミキイロアザミウマやミカンキイロアザミウマなど、一部のアザミウマは農業害虫として重要な地位を占めています。

アザミウマは植物の表面をかじって、細胞の中身を吸汁します。すると、空っぽになった細胞が光を反射して銀白色に見えるようになるので、アザミウマによる葉への吸汁被害痕は「シルバリング」と呼ばれます。

 

#33-2葉の被害(シルバリング)

 

また、アザミウマの排せつ物は時間がたつと黒く変色するので、シルバリングは通常黒い斑点を伴います。
シルバリングはアザミウマの加害により発生する代表的な症状ですが、アザミウマの加害による症状はシルバリング以外にもあることと、シルバリングに似た被害を引き起こす害虫は他にも居るという点を覚えておきましょう。

シルバリングの被害を引き起こすその他の害虫としては、グンバイムシの仲間やハダニの仲間がいます。
特にハダニ類は防除に用いる農薬の種類がアザミウマとは異なる場合が多いので、アザミウマと誤認してしまうと防除が失敗してしまう危険性があります。シルバリングが発生したら、ルーペ等で犯人を確認してから防除を行うようにしましょう。

 

#33-3間違えやすい他の害虫の加害

 

アザミウマは「増殖が早い上に農薬がかかりにくい部位に多い」、「単為生殖をする」などの理由から、農薬に対する抵抗性が付きやすく、防除が難しい害虫です。また、農作物に被害が生じ始めるまでの密度が低く、発生が少なくても被害が生じうるという問題もあります。一部の作物でとりわけ問題となるのは、アザミウマの種類によっては病原ウイルスを媒介するものがいるという点です。場合によっては壊滅的な被害を被ることもあります。

アザミウマ類は気温が上がってくる春先以降に特に問題となりやすい害虫です。
次回からアザミウマ類について何回かに分けて取り上げていきたいと思います。

 


≪参考文献≫
– “アザミウマ”. Wikipedia日本語版. 2018-03-17.
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B6%E3%83%9F%E3%82%A6%E3%83%9E , (参照 2018-04-04)
– Sunada, S. et al. Fluid-dynamic characteristics of a bristled wing. The Journal of Experimental Biology. 2002, vol. 205, p. 2737-2744.