イトウさんのちょっとためになる農業情報

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イトウさんのちょっとためになる農業情報 第35回『ミナミキイロアザミウマが媒介するウイルス病』

※こちらの記事はアグリノート公式Facebookページに掲載した連載記事を、アーカイブとして転載したものです。

【2018/04/19更新:第三十五回】

本日の『元普及指導員・イトウさんの“ちょっとためになる農業情報”』は、前回の「ミナミキイロアザミウマ」のお話しの後編、ミナミキイロアザミウマによる困りごと、ウイルス被害についてのお話しです。

ミナミキイロアザミウマが媒介するウイルス病

ミナミキイロアザミウマが媒介するウイルスとしては、トマト黄化えそウイルス(TSWV)、スイカ灰白色斑紋ウイルス(MSWoV)、メロン黄化えそウイルス(MYSV)などが知られていますが、この中で特に問題となっているのはMYSVです。

 

MYSVの症状

MYSVはその名のとおりメロンでメロン黄化えそ病を引き起こしますが、キュウリに感染すればキュウリ黄化えそ病を引き起こします。
MYSVに感染した株は生長点を中心に葉脈透過症状やモザイク症状が現れ、これが次第に株全体へ広がり、下葉は黄化・白化して収量が著しく低下します。

 

#35キュウリ黄化えそ病の葉脈透過症状

 

葉脈透過症状

「葉脈透過症状」というのは、MYSVに限らず、モザイク症状を生じさせるようなウイルス病の多くで感染初期に見られる症状です(必ず見られる訳ではありません)。

この症状の特徴は葉脈が少し太くなったように見える点です。これは葉を裏から光に透かすとよくわかります。表からではなかなか分かりません。また、感染初期の症状は若い生育途中の葉に現れる傾向があります。日頃から上位葉を裏から透かして確認する習慣を身につけておくことが大切です。

 

ウイルス病の診断

ウイルス病であるか否か、という点だけなら、葉脈透過症状やモザイク症状から比較的簡単に見当が付けられます。植物のウイルス病は治療する技術が確立されていないので、どのような種類のウイルスであっても早期の抜き取り処分が主な対策となります。怪しい株が少数であれば、まずは抜き取りを優先しましょう(抜き取る前に症状を写真で記録しておくと、後に診断が必要となった場合に重要な情報となります。アグリノートでは作業記録や生育記録に写真が登録できます。詳しくは「使い方ガイド」をご確認下さい)。

※アグリノート 使い方ガイド|記録に写真をつける
https://www.agri-note.jp/guide/manual/report/growth/#5

その後の対策を考える上では、ウイルスの種類を特定しておくことは有用です。ウイルス病の種類を確定させるためには電子顕微鏡による観察や遺伝子診断が必要となりますので、必要に応じて専門業者や普及指導機関に診断を依頼すると良いでしょう。
個人でも実施可能な診断方法として、抗原抗体反応を利用したRIPA法という手法を使った簡易の診断キットもあります。ただしやや高価で、診断できるウイルスの種類も限られています。
警戒すべきウイルスの種類が限定されている場合には導入を検討しても良いかもしれません。

 

間違えやすい症状

ウイルス病に類似の症状を引き起こす害虫や生理障害があるという点は注意しておく必要があります。
例えばマグネシウム欠乏による葉脈間の黄化や、フシダニ科(一般にはサビダニ類と呼ばれます)の一種による被害、アブラムシによる被害などは、ウイルス病の被害に類似する場合があります。

※アブラムシについては過去の記事も合わせてどうぞ
https://www.agri-note.jp/2017/07/fb-archive04/

このような紛らわしい症状を引き起こす生理障害や病害虫は作物毎に限られており、多くは症状を把握しておけばウイルス病と区別することができます。
栽培している作物で、ウイルス病と誤認しやすい症状を引き起こす生理障害や害虫は何があるのか、という点は把握しておきましょう。

 


≪参考文献≫
– 農研機構. フシダニによる被害(輪紋病). 2012-01-27.
https://www.naro.affrc.go.jp/flower/kakibyo/plant_search/sa/shikimi/post_541.html
(参照: 2018-04-11)
– 農研機構. RIPA法.
http://www.naro.affrc.go.jp/org/karc/VM/RIPA.html
(参照: 2018-04-19)
– 全農 営農・技術センター 農薬研究室. アザミウマ類が媒介するウイルス病とその防除対策. グリーンレポート. 2013, No.528, p.14-16.
https://www.zennoh.or.jp/eigi/research/pdf/gr528_08.pdf
(参照: 2018-04-11)
– 平井篤造, 山口昭. 植物ウイルス総論. 第3版, 養賢堂, 1971, 261p.