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イトウさんのちょっとためになる農業情報 第36回『ミナミキイロアザミウマが媒介するウイルスと経緯』

※こちらの記事はアグリノート公式Facebookページに掲載した連載記事を、アーカイブとして転載したものです。

【2018/05/10更新:第三十六回】

本日の『元普及指導員・イトウさんの“ちょっとためになる農業情報”』は、前回の「ミナミキイロアザミウマのウイルス被害」のお話しの続きになります。
前回はミナミキイロアザミウマがウイルス病を媒介する場合がある、というお話しをご紹介しましたが、今回はそのウイルスと媒介の経緯についてです。

アザミウマ類が媒介するウイルス

トスポウイルス

アザミウマの媒介するウイルスは、MYSVも含めて全てブニヤウイルス科のトスポウイルスというグループに属しています。

トスポウイルスの伝染には特徴的な部分があります。
それは、一度アザミウマがウイルスを獲得すると、体内でウイルスが増殖を続け、生涯ウイルス伝染能力を持ち続けるという点です。これは、ある意味でアザミウマ類もウイルスに感染していると見ることができます。
トスポウイルスを保毒することでアザミウマ類の生存日数が低下する例も知られています。トスポウイルスが属するブニヤウイルス科は、トスポウイルス以外は人畜に感染するウイルスが主で、植物ウイルスのグループというよりは動物ウイルスのグループといった雰囲気があります(*1)。

*1 トスポウイルスは人畜に感染しませんので、罹病植物を食べても問題はありません

 

アザミウマのウイルス獲得

一度ウイルスを保持すると終生ウイルスを媒介しつづけるというのは非常に厄介な性質です。しかし、ウイルスの獲得はアザミウマが孵化した直後の若い時期にしか起こりません。そのため、感染植物上で生まれた幼虫が成虫になったタイミングから急激に感染拡大のリスクが高まります。

ちなみに、植物ウイルスの伝染というと汁液伝染というイメージがあるかもしれませんが、トスポウイルスは空気中では活性を失うまでの速度が早いので、汁液伝染はあまり起こらないと考えられています(*2)

*2 全く汁液伝染しないというわけではなく、するつもりで処理をすれば伝染させることも可能です

しかし、前回お話ししたようにウイルス病を症状から診断することは難しいので、診断に自信が無い場合は汁液伝染するウイルスだと仮定して対処をした方が安全です(手指や刃物を消毒する、刃物を専用のものにする、作業順序を最後にするなど)。

 

MYSVの伝染源

MYSVは様々な植物に感染するウイルスです。キュウリやメロンの他にはスイカやシロウリのようなウリ科植物、カタバミやホトケノザといったほ場でよく見る雑草など、宿主範囲は科を超えて多岐にわたります。これらのなかには感染しても必ずしも症状が現れないものもあります。感染するからといって伝染源になるとは限りませんが、特にウリ科植物はリスクが高いと考えられます。

 

#36アザミウマによるウイルス媒介サイクル

 

キュウリやメロンに限った話ではありませんが、残渣や感染植物をほ場の近くにそのまま捨ててしまうと、病害虫をそこで飼育してしまうことになりかねません。残渣の処分はほ場から離れた場所で穴を掘って埋めるなど、慎重に行う必要があります。

MYSVの伝染拡大を食い止めるためには、屋外からの飛び込みを防ぐのは勿論のこと、圃場内で繁殖させないことが何より重要です。ウイルスを保持した成虫が飛び込んでくれば当然感染リスクがありますが、前述の通り、ウイルス獲得ができるのは幼虫だけですから、圃場内での繁殖を抑えられれば伝染拡大リスクを低く抑えられます。
圃場周辺の衛生管理、感染株の早期抜き取り、アザミウマ類の定期的な防除に努めることが重要です。

 


≪参考文献≫
– 櫻井民人. “虫媒性ウイルスの巧妙な手口”. 『むしコラ』むしむしコラムおーどーこん -近くて不思議な虫の世界-. 2007-03-27.
http://column.odokon.org/2007/0327_180400.php
(2018-04-26参照)
– 愛知県. “知ってとくとく キュウリ黄化えそ病”. あいち病害虫情報.
https://www.pref.aichi.jp/byogaichu/2014/shiryou/kyuurioukaeso141.pdf
(2018-04-26参照)