イトウさんのちょっとためになる農業情報

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イトウさんのちょっとためになる農業情報 第41回 土壌診断#1『土壌診断とは』

※こちらの記事はアグリノート公式Facebookページに掲載した連載記事を、アーカイブとして転載したものです。

【2018/06/28更新:第四十一回】

『元普及指導員・イトウさんの“ちょっとためになる農業情報”』、新シリーズがスタートです!

皆様は土壌診断をされたことはありますか?

新シリーズは『土壌診断』をテーマにお送りいたします。
診断項目についてイトウさんが順に解説していきますので、シリーズが終わるころには土壌診断の理解が深まっている、という楽しみが待っています@^△^@/

初回はイントロとして土壌診断とはどういうものなのかをご案内いたします。

 

土壌診断

促成作型の施設品目などでは、そろそろ土壌診断の時期になっている場合もあるのではないでしょうか。
今回から何回かに分けて土壌診断について取り上げていきます。

 

診断項目

一般的な土壌診断では、以下の10から13項目程度を対象に、成分の過不足は無いか、土壌の性質は作物の生育に適しているか、といったことを調べます。

– pH
– EC
– CEC
– 窒素(アンモニア態、硝酸態、培養窒素など)
– 有効態リン酸(可給態リン酸やトルオーグリン酸と呼ばれる場合もあります)
– 交換性加里
– 交換性石灰
– 交換性苦土
– 有効態ケイ酸(基本的には水稲のみ)
– 遊離酸化鉄(基本的には水稲のみ)
– 腐植(単に有機物と言われる場合もあります)
– リン酸吸収係数(最近は調べない事が多いようです)

この他に、上記の調査結果から計算によって求められる塩基飽和度なども土壌診断結果に含められます。また、マンガンやホウ素などの微量要素や、土性のような物理的性質を診断する場合もあります。

土壌診断項目のうち、pHやECなどは安価で使用が簡単なセンサーが市販されているので、自分でも容易に調査ができます。しかし、その他の項目について自分で調べようとすると時間も手間もお金もかかります。これらについては地域のJAや普及指導機関、その他専門業者等に相談してみると良いでしょう。
依頼先や分析項目数にもよりますが、1検体数千円から1万円前後で実施しているところが多いようです。
簡易の分析器を採用することで、1検体数百円程度にコストを抑えている例もあります。

 

実施時期

土壌診断結果は施肥や土壌改良を考えるための基礎となるデータです。遅くとも、基肥や土壌改良材を注文する前までには結果を入手しておく必要があります。
土壌分析は手間のかかる作業なので、結果を得るまでにはどうしてもある程度の日数がかかります。余裕をもって依頼できるように計画しておきましょう。

また、施設果菜類のように栽培期間が長期に渡る作目では、栽培期間中にカルシウムやマグネシウム等が不足する場合もあります。
栽培期間の途中で一度土壌診断を行っておくと、追肥の必要性と量を判断する上で有用です。

 

土の採取

土壌の採取方法は、一般的には

– 表層1cm程度を除外し
– 作土層(表層から15cm程度まで)を均等に
– 圃場全体の5ケ所程度から採取し混合

と言われています。

表層を除外するのは、土壌の表面は蒸発に伴って移動してきた塩類が集積している可能性があり、診断結果が不安定となる可能性があるためです。

 

#41 土を採取するときのポイント

 

作土層から均一に土壌を採取するのはコツがいりますが、斜めに穴を掘ると比較的均一に採取できます。また、やや高価ですが「線虫スコップ」というスコップを使うと、一定の深さで一定量の土壌を簡単に採取できます(これはもともと土壌線虫の調査の際に使用されるスコップなのでこのような名前で呼ばれています)。

圃場の中の複数箇所から採取して混合という点については多少注意が必要です。
圃場内の土壌が比較的均質であればあまり問題はありませんが、局所的に肥料成分の濃い場所があったりすると、混合結果の土の成分はその場所の成分値に引っ張られる形で大きくなってしまいます。
手が滑って多めに肥料が落ちてしまったとか、そこだけ作物が病気で枯れてしまったとか、灌水チューブが偏っていて水がかかっていなかったとか、いろいろな理由で局所的に肥料濃度が高くなる可能性はあります。

コストは余分にかかってしまいますが、圃場内をいくつかの区画に区切って区画ごとに土を採取し、それぞれ土壌診断をするとより確実です。
特に、栽培期間が長く施肥量も多い施設品目では圃場内に肥料成分の偏りが生じることもしばしばあります。
区画ごとに土壌診断を行えば圃場内の偏りも把握しやすくなります。
複数の測定値を平均することは簡単ですが、混ぜてしまった土から圃場内の偏りを再現することはできません。
圃場数が多いような場合には難しいと思いますが、生育の様子が違うような場所がある場合には特に、採土場所を分散させず、複数のデータを得ることを優先させたほうが良いでしょう。

 


≪参考文献≫
– 前田正男, 松尾嘉郎. 図解 土壌の基礎知識. 農山漁村文化協会. 1974.
– 全国農業協同組合連合会(JA全農)肥料農薬部. だれにでもできる 土壌診断の読み方と肥料計算. 農山漁村文化協会. 2010.