イトウさんのちょっとためになる農業情報

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イトウさんのちょっとためになる農業情報 第42回 土壌診断#2『土性』

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※こちらの記事はアグリノート公式Facebookページに掲載した連載記事を、アーカイブとして転載したものです。

【2018/07/19更新:四十二回】
『元普及指導員・イトウさんの“ちょっとためになる農業情報”』新シリーズ「土壌診断」の第2回をお送りいたします。

前回はシリーズ初回ということで、土壌診断とはどういうものなのか、どのような診断項目があるのか、基礎的なお話しでしたが、今回からいよいよ診断項目を追っていきます。

 

土性

土性は土壌が粘土質なのか砂質なのかといったことを示す指標です。

土性は土壌診断に必須の項目ではありませんが、補助的な情報として土壌診断結果に含められることがあります。
自分の圃場がどのような土性であるのか、ということを把握しておくことは大切です。

 

土性の判定

土性は細かく判定することもありますが、大まかな分類に対する判定なら自分でもできます。
「大まかな分類」は以下の通りです。

– 埴土:粘土50%以上
– 埴壌土:粘土37.5%から50%
– 壌土:粘土25%から37.5%
– 砂壌土:粘土12.5%から25%
– 砂土:粘土12%以下

粘土っぽいものが埴土で、砂っぽいものが砂土、間のちょうどいい状態が壌土です。

簡易の判定法として、少し水を加えて棒を作ってみるというやり方があります(以下の分類は前田正男・松尾嘉郎『図解 土壌の基礎知識』からの引用です)。

– 埴土:ほとんど砂を感じずヌルヌルした状態。棒を作るとこよりのように細くできる。
– 埴壌土:ほとんど粘土だが一部砂を感じる。棒を作るとマッチくらいの太さにできる。
– 壌土:砂と粘土が半々くらいの印象。棒にできるのは鉛筆くらいの太さまで。
– 砂壌土:大部分が砂で、少し粘土を感じる。棒は作れない。
– 砂土:ほぼ砂。全然まとめられない。

 

土性と土壌の基本的な特性の関係

粘土は肥料分を土に維持するために重要な役割を果たします。粘土は電気的な力で石灰や苦土や加里といった成分を、必要であれば植物が使える程度の力で吸着します。つまり、粘土が多い土ほど保肥力が高いと言えます。

ここで何気なく「粘土」と言いましたが、粘土というのは土壌粒子のなかで特に直径2μm(1μmは1/1000mm)以下のものに対する呼び方です。この粒径以下の粒子を特に重要視するのは、2μm程度を境目にして粒子の凝集性や吸着性など性の質が大きく変化するためです。つまり、粘土が多いかどうかで土の性質が変わるということです。

粘土と砂を比べると、直径が違うだけではなく、重量あたりの表面積も違っています。直径2mm(いわゆる「砂」の上限の大きさです)の土の表面積は1gあたり0.001m²程度(1円玉3枚分くらい)ですが、直径2μmでは約1m²(見開き新聞紙2枚分)にもなります。そして、土の粒子はその表面にカルシウムやマグネシウム、カリウムといった肥料分を吸着して保持しますから、粘土の保肥力が砂に比べていかに大きくなるかが想像できると思います。

とはいえ、粘土が多いだけだと土の粒子の間が埋まってしまって、水はけの悪い土壌になってしまいます。水はけは砂土の方が良好です。

まとめると、

– 粘土質:保肥力大・透水性小
– 砂質:保肥力小・透水性大

ということになります。粘土質の土壌では排水対策をしっかりと行う必要がありますし、砂質の土壌では保肥力と保水力が低いことを見越した管理が必要になります。

砂質の土壌では肥料が保肥力に対して多すぎると、土壌中の水分に溶けた肥料成分の濃度が高くなりすぎて根が焼けてしまう危険性がありますから、1回の施肥量に注意する必要があります。保肥力に対して肥料分が多いのか少ないのかといった点は、後に見るCECや塩基飽和度という指標を確認すると明らかになります。

土性は土壌の粒子に由来する性質なので、改良するというのは容易ではありません。それよりも、圃場の土がそのような性質をもっているのだという認識を持って、土性に応じた管理を行っていくことが大切です。

 

#42 土の粒子の大きさと表面積の関係

 


≪参考文献≫
– 前田正男, 松尾嘉郎. 図解 土壌の基礎知識. 農山漁村文化協会. 1974.
– 岡島秀夫. 土の構造と機能 -複雑系をどうとらえるか-. 農山漁村文化協会. 1989.