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イトウさんのちょっとためになる農業情報 第44回 土壌診断#4『EC』

※こちらの記事はアグリノート公式Facebookページに掲載した連載記事を、アーカイブとして転載したものです。

【2018/08/02更新:四十四回】
『元普及指導員・イトウさんの“ちょっとためになる農業情報”』新シリーズ「土壌診断」、第4回は『EC』のお話です。

EC

ECもpHと同様、安価なセンサが市販されているので比較的測定しやすい項目です。
一方、これもpHと同じで「結局具体的に何の数字なのか」という点が分かりにくい測定項目だったりします。

 

p電気伝導率

ECというのはElectrical Conductivityの頭文字をとったもので、日本語では電気伝導度や電気伝導率、伝導率、導電率などの呼び方をします(分野によって呼び方はまちまちです)。これは「電気の通りやすさ」を示す値です。値が大きいほど電気がよく流れるということです。

ECの単位としては、mS/cm(Sはジーメンスと読みます。mSはミリジーメンスです。)がよく使われます。しかし、測定対象によってはmS/cmの1/1000の単位であるμS/cmが使われることもあります。

土壌溶液を対象とする場合、通常はmS/cmで測定するのに適した値が出ますが、非常に肥料濃度が薄い場合などにはμS/cmでの表示が適する値となる場合もあります。センサの種類によっては自動的に2つの単位を切り替えるものもありますから、測定する際には単位に注意が必要です。

 

ECの用途

そもそもなぜ土壌溶液の電気の通りやすさを測るのか、ということを説明します。

水にはいろいろなものを溶かす能力があります。肥料成分も例外ではなく、これらは硝酸イオンやアンモニウムイオンなど、イオンの形で土壌溶液に溶けています。そして、このイオンが多く溶けているほど電気が通りやすい、つまり、ECが高くなりやすいという傾向があります。つまり、ECを測定することで間接的に液体中のイオンの量を測定できるわけです。

ECは、土壌中に溶けているイオンの量の合計に比例します。ECが2倍になれば、土壌溶液中に溶けているイオンが2倍になるということです。

このイオンの量とECの関係はイオンの種類によりません。しかし、土壌はイオンを平等に吸着するわけではないため、土壌溶液中でECと関係するイオンの種類はある程度限られてきます。特に、一般的な施肥条件と肥料濃度の範囲であれば、イオンの中でも特に硝酸イオンの濃度とECの間の比例関係が出やすいという特徴があります。したがって、ECは硝酸イオン濃度の目安になります。

硝酸イオンは植物が吸収しやすい窒素の形態ですので、硝酸イオン濃度を測定するということは土壌中で吸収しやすい状態になっている窒素の量を測定するということでもあります。もちろん、正確性でいえば窒素を直接測定したほうが良いのですが、なによりECセンサによる測定はすばやく結果が分かるという利点があるため、簡易診断としては非常に優れた方法といえます。

ECが必ずしも窒素の量を反映しない場合もあります。たとえば施設栽培などで石灰や苦土、加里などが多い場合です。これらの成分はふつう土壌粒子に吸着され、土壌の能力の範囲内であればECはあまり上がりません。しかし、限度を超えてしまうと土壌溶液中の濃度が上がり、ECの上昇につながる場合があります。このような場合には、ECセンサより少々高価ですが硝酸イオン濃度を直接測定するセンサも市販されているため、こちらの利用を検討してみると良いでしょう。

 

土壌診断04_ECと窒素量の関係

 

どの程度のECを目安とすべきかは品目と土壌の性質によりますが、大雑把にいって果菜類は葉菜類よりもやや高いECに耐える傾向があり、砂質の土壌では低いECでも障害が出やすい傾向にあります。
定植前の測定値として0.3mS/cm程度が目安とされることが多く、これを上回る場合には基肥施用量を減らすなどの対策を検討しましょう。

 


≪参考文献≫

– 瀧勝俊. 施設土壌における窒素診断の問題点. 農業技術. 1992, vol. 47, p. 207-212.
– 藤原俊六郎ら. 土壌診断の方法と活用. 農山漁村文化協会. 1996.
– 六本木和夫. リアルタイム診断と施肥管理. 農山漁村文化協会. 2007.