イトウさんのちょっとためになる農業情報

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イトウさんのちょっとためになる農業情報 第47回 土壌診断#7『土壌改良資材とpH』

※こちらの記事はアグリノート公式Facebookページに掲載した連載記事を、アーカイブとして転載したものです。

【2018/08/30更新:四十七回】
『元普及指導員・イトウさんの“ちょっとためになる農業情報”』、土壌診断シリーズの第7回は『土壌改良資材とpH』のお話です。

資材の酸性・アルカリ性

肥料のうち、酸性のものを化学的酸性肥料、アルカリ性のものを化学的アルカリ性肥料と呼ぶことがあります。
化学的酸性肥料を施せばpHが下がりますし、化学的アルカリ性肥料を施せばpHが上がります。

なぜわざわざ「化学的」などと付けるかというと、他の側面から見た酸性・アルカリ性もあるからです。

肥料の中には、主な成分が植物に吸収される際に副産物が土壌pHを変化させるものがあります。
植物が成分を吸収したときに、土壌pHを下げる性質があるものを生理的酸性肥料、上げる性質があるものを生理的アルカリ性肥料と呼びます。

最終的には生理的な酸性・アルカリ性の方が重要ですが、化学的な酸性・アルカリ性がどうでもいいかというとそうではありません。
施用直後の土壌pHに影響するのは当然ですが、肥料を混合するような場合に問題になることがあります。
例えば硫安を化学的アルカリ性肥料と混合すると、アンモニアがガス化してしまうので速やかに施用しなければいけません。

今回は石灰、苦土、加里を含む資材を選定する際のポイントを、pHとの関係を中心に説明していきます。

 

石灰

石灰はpHを上げるために使用される資材、というイメージが強いと思います。
実際、炭酸石灰や消石灰などは化学的にも生理的にも酸性の資材です。

一方、施用してもpHが上がらない資材もあります。石こう(硫酸カルシウム)や過リン酸石灰(過石)が該当します。
石こうはカルシウム以外に硫黄の施肥効果も期待できます。過リン酸石灰は副成分として60%程度の石こうを含むため、カルシウムと硫黄の供給効果としては石こうと同様のものが期待できます。これらは酸性の肥料ですが、施しても大きくpHが低下することはなく、僅かに低下するかほとんど変化しない場合が普通です。

なお、過リン酸石灰は即効性の水溶性リン酸を成分として含み、栽培初期の根の伸長に良好な効果がありますが、土壌に触れると不溶化しやすいという欠点があります。
過石を堆肥に混合して植え穴に施すと、初期の根が触れやすく土壌に触れにくい状態になるため、より効果が得られやすくなります。

 

苦土

苦土は炭酸石灰などの石灰資材に含まれる場合がありますが、そのうち成分として一定量以上を保証するものは炭酸苦土石灰などの名称で販売されています。

苦土のみを保証する肥料としては、硫酸苦土(硫マグ)や水酸化苦土(水マグ)などがあります。

硫酸苦土は唯一の水溶性苦土肥料であり、即効性であり銘柄によっては葉面散布にも利用できます。
化学的には中性ですが、硫酸根を含むので生理的には酸性です。基肥にも追肥にも使えます。

水酸化苦土はく溶性の苦土を含み、化学的・生理的ともにアルカリ性の肥料です。
く溶性というのは薄いクエン酸に可溶という意味で、水溶性より溶けにくいので効果はゆっくりです。土壌によく混ざるように、基肥として施すのがふつうです。アルカリ性の肥料ではありますが、強い酸性を矯正するほどの能力はないので、pH矯正が必要な場合は石灰資材との併用が必要です。また、微量のホウ素を含むので、ホウ素欠乏の予防にも効果的です。

 

加里

水溶性で即効性の加里資材として硫酸カリ(硫加)があります。
硫酸カリは即効性ではありますが、土壌によく吸着されるので基肥にも使用でき、使い勝手の良い資材です。ただし、化学的には中性ですが、生理的には酸性なので、pHが低い場合には使いづらい場合があります。

水溶性でpHを下げないカリ資材として炭酸カリがあります
。炭酸カリの水溶液は強いアルカリ性を示しますが(したがって取り扱いには注意が必要です)、植物に吸収された後には副産物が残らないので、土壌への影響があまりありません。
炭酸カリには草木灰を原料とするものがあり、これは有機栽培でも利用可能な資材です。難点は価格が高いということです。

く溶性のカリを含む資材としてケイ酸カリがあります。
肥効がゆるやかで、多く施用しても濃度障害が起こりにくいという特性があります。ケイ酸を多く吸収する水稲でよく使用される資材ですが、畑作物でもケイ酸の施用により収穫物の品質向上や鮮度保持に効果が期待できる場合があります。
畑作物で使用する場合は基本的には全量基肥で使用します。化学的にも生理的にもアルカリ性の資材ですが、pHの上昇は緩やかです。

 

#7塩基類とpH

 


≪参考文献≫

– 塩崎尚郎 編. 肥料便覧 第6版. 農山漁村文化協会. 2008.