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イトウさんのちょっとためになる農業情報 第51回 土壌診断#11『肥料成分の読み方』

※こちらの記事はアグリノート公式Facebookページに掲載した連載記事を、アーカイブとして転載したものです。

【2018/10/25更新:五十一回】
『元普及指導員・イトウさんの“ちょっとためになる農業情報”』土壌診断のお話し、第11回のテーマは『肥料成分の読み方』です。

 

肥料成分の読み方

 

成分の表記方法

肥料には保証票を表示することが義務付けられています。
保証票には、たとえば次のような形で重量に対する割合として保証成分が記載されています。

——————————————
保証成分量(%)
    窒素全量 10.0
        内アンモニア性窒素 8.0
    りん酸全量 10.0
        内可用性りん酸 9.6
        内水溶性りん酸 5.0
    水溶性加里 5.0
——————————————

「保証成分量」というのは最低限入っていることが保証されている量であり、実際の成分量はこれより高くなります。つまり、保証成分量では厳密な施肥は難しいのですが、ほかに信用できる値もないため保証成分量による施肥が行われているというのが実情です。

また、保証成分の対象になるのは、次の成分だけです。植物が養分として利用する成分のすべてが保証成分として扱われる訳ではありません。

    – 窒素
    – りん酸
    – 加里
    – アルカリ分
    – けい酸
    – 苦土
    – マンガン
    – ほう素

上記の成分は基本的には酸化物相当の値に換算されていますが、窒素のみは元素(N)としての値となっています。

また、保証成分以外に、「効果発現促進剤」として鉄、銅、亜鉛、モリブデンの量が記載されている場合があります。これらは酸化物ではなく、元素としての量が記載されます。

成分によって酸化物であったりなかったりややこしいのですが、一般的な土壌診断結果は肥料の表記方法とそろえられていますから、基本的にはこの違いをあまり気にする必要はありません。

 

石灰の成分量

実は石灰は保証成分ではありません(肥料の種類によっては保証成分ではない形で石灰全量が記載されるものもあります)。代わりに「アルカリ分」というものがあります。これは、pHの矯正効果に注目した値で、石灰の量と苦土の量の合計になっています。しかも、苦土の量は石灰の相当量になっているので、そのままの合計ではなく苦土を1.4倍した値との合計になっています。したがって、苦土石灰のように苦土の成分量も保証されている肥料であれば、苦土の値を1.4倍したものをアルカリ分から引けば石灰の成分量の目安が分かります。

また、アルカリ分は土壌のpH矯正に注目した値なので、過リン酸石灰や石こうに含まれる石灰のようにpHを変化させない石灰は含まれていません。
これらの資材では、別途石灰の分析値が参考情報として提供されている場合もあります。そうでなければ、たとえば過リン酸石灰であれば一般的に60%程度の石こうを含みますから、こういった情報から推測して計算する必要があります。

 

水溶性・可溶性・く溶性

窒素以外の成分については、水溶性・可溶性・く溶性という区別があり、「可溶性りん酸」のように成分名と組み合わせた表現が使われています。
それぞれ以下のような区別になっています。

    – 水溶性・・・水に溶ける形の成分。
    – 可溶性・・・塩酸などに溶ける成分。
    – く溶性・・・2%のクエン酸に溶ける成分。

可溶性とく溶性の関係は少し微妙ですが、基本的にはく溶性の方が溶けにくいと考えてください。
また、ひとつの成分について複数の形態が書いてある場合があります。
冒頭の例でいえば、

    – 窒素全量 10.0
        – 内アンモニア性窒素 8.0
    – りん酸全量 10.0
        – 内可用性りん酸 9.6
        – 内水溶性りん酸 5.0

のようになっていました。

窒素の場合、全量は10%であるが、8%はアンモニア性窒素であることが分かります。残りの2%が何なのかは保証票からは分かりません。とにかく窒素であるということです。

りん酸は可溶性9.6%と水溶性5.0%を足すと全量より多くなってしまいますが、これはどういうことかというと可溶性9.6%の中に水溶性5.0%も含まれている、ということです。
より溶けにくいものの中に溶けやすい成分の量も含まれてしまうという関係があります。窒素と同様、残りの0.4%がどんな形態かは分かりません。

特定の成分が結局どれだけ含まれているのか、ということを知りたい場合は、頭に「内」がついていない成分に注目してください。それが、その成分の全量に対応します。
各成分毎にひとつだけ「内」の付いていない表記があるはずです。

基本的には可溶性やく溶性は遅効的なので基肥に、水溶性は即効的なので追肥や葉面散布に、という使い分けになります。
水溶性加里のように土壌によく吸着される成分は基肥にも使えます。
なお、肥効は肥料の形状によっても変わり、粒状のものは粉状のものより遅効的になります。

 

図11-肥料成分の読み方

 


≪参考文献≫

– 西尾道徳. 堆肥・有機質肥料の基礎知識. 農山漁村文化協会. 2007.
– (独)農林水産消費安全技術センター. “肥料・土壌改良資材”. http://www.famic.go.jp/ffis/fert/index.html (参照 2018-07-13)