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イトウさんのちょっとためになる農業情報 第15回『生物的防除法-土着天敵の利用-』

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※こちらの記事はアグリノート公式Facebookページに掲載した連載記事を、アーカイブとして転載したものです。

【2017/9/14更新:第十五回】

こんにちは。アグリノートサポートチームです。

コラム連載15回目の本日は、防除法の2つ目生物的防除についてのお話しです。
近年注目の『土着天敵』の利用方法とは?

 

害虫に対する生物的防除法

過去に取り上げたアブラムシに対する天敵の利用事例や、微生物農薬を利用した防除は生物的防除法の例です。
今回は近年注目されている土着天敵の利用方法についてお話しします。

 

土着天敵による害虫防除

自然界には害虫に寄生したり捕食したりする天敵が数多く存在しています。
もし、これら天敵の能力を発揮させてやることができれば、害虫防除に役立ってくれるはずです。

しかし、普通に管理している普通のほ場で天敵が勝手に増えてくれることはあまり期待できません。植生が単一であるとか、天敵に影響がある農薬が使用されているなどの理由によります。従って、このようなポイントを改善できれば良いわけです。

 

植生の改善による天敵機能の増強

麦やソルゴーなどのイネ科植物には、ムギクビレアブラムシなどのイネ科植物専門のアブラムシが発生します。
このアブラムシはナスやピーマンなどの野菜類には寄生しませんが、アブラムシを食べる天敵類の餌となります。そこで、これらをほ場内に混植したり、ほ場周囲に植えることで天敵の維持温存を図ることができます。

施設栽培などではムギクビレアブラムシが寄生した麦を植えた上で、それをアブラムシの寄生蜂の餌にする、というような技術があります。このような「天敵の餌となる昆虫の餌となる植物」をバンカープランツと呼びます。天敵を預かってくれることからバンカー(銀行家)と呼ぶようです。バンカープランツは天敵の餌になる昆虫を増やすことで間接的に天敵を維持します。従って「天敵の餌になる昆虫」がメインの作物の害虫とならないような植物をバンカープランツに選択することがポイントになります。

一方、屋外にオクラやバジルなどを植えておくと、花粉や花蜜などを誘因として、天敵が自然に発生し、維持されることがあります。
このように自然に存在する天敵類を温存し、機能の増強が図れる植物はインセクタリープランツや天敵温存植物と呼ばれることがあります。

 

土着天敵を増殖して使用する方法

近年、土着天敵を自分で増殖して防除に活用するという取り組みが盛んで、ナスやトマト、キュウリといった果菜類を中心にタバコカスミカメという天敵の利用が広まっています。
タバコカスミカメは上手く利用できればコナジラミ類やアザミウマ類に抜群の効果を発揮してくれます。2015年には利用マニュアルも公開されています。

05_タバコカスミカメ成虫

05_タバコカスミカメ幼虫

タバコカスミカメは今のところは自分で捕獲するか、既に利用している方から譲渡を受ける必要があります。そして、土着天敵の捕獲や譲渡、増殖にあたってはルールが定められています。

その点も含めて、次回は土着天敵利用時のポイントと注意点を説明します。

 


≪参考文献≫
-[ナスのハウスにスカエボラ スワルスキーはちゃんと越冬した | 現代農業]
http://lib.ruralnet.or.jp/cgi-bin/ruraldetail.php?KID=201506_052
-[タバコカスミカメを利用した施設ナス・キュウリでの害虫防除 | ネット農業あいち – 技術と経営]
http://www.pref.aichi.jp/nogyo-keiei/nogyo-aichi/gijutu_keiei/yasai1505.pdf
-[施設キュウリとトマトにおけるIPMのためのタバコカスミカメ利用技術マニュアル(2015年版) | 農研機構]
http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/laboratory/narc/manual/060741.html

※本連載での公開記事でも関連する内容を取り上げております。合わせてご覧ください。
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