記録は宝!継続運用を経て数年の記録が蓄積されたら、多角的にデータを分析して利活用したいです。
鹿児島県志布志市鹿児島堀口製茶有限会社
この事例のポイント!
- 自社システムでの管理に限界を感じ、アグリノートでの管理に移行
- 記録内容を確認する担当者が、定期的に記録の漏れや抜け、正確さをチェック
- 記録データの検証・分析での利活用と、契約先を含む一元管理が目標
10年使った自社システムからアグリノートに管理を移行。次年度に向けたデータの利活用から、その先の目標に向け記録を蓄積中!
活火山で知られる鹿児島県の桜島。鹿児島堀口製茶様は桜島の東側にあたる大隅地方で、お茶の栽培から製造・販売まで幅広く手掛けられています。系列茶園を合わせると約280haの大規模、且つASIAGAPや有機JAS認証など各種認証を取得されており、徹底した生産管理を実践されている点も見逃せません。
そのような現場で、アグリノートはどのように運用され皆様のお役に立っているのか、管理全般を担当されているスマート農業推進部 兼 茶園管理部 部長 小牧 健太郎様にお伺いしました。
システムを利用して即すべてが改善されるわけではない。運用を通じスタッフからの意見から新たな気づきも得られました。
– はじめに、アグリノートを始められた経緯からお伺いできますでしょうか。
「アグリノートを始めたのは、一昨年のスマート農業実証(令和元年度からスタートした農林水産省による『スマート農業実証プロジェクト』)からになります。それまで10年ほど自社のシステムで管理を続けてきた中で、ローカルのシステムでは事務所以外で情報登録や閲覧ができないという課題がありました。そこで実証事業への参画を機に、現場でも使えるものとしてアグリノートの利用を開始しました。」
– 10年続けてきたシステムからアグリノートへの移行はスムーズにできましたか?
「10年使っていますから正直簡単ではありませんでしたが、実証事業の取り組みの中で操作や管理の仕方について研修会をお願いするなど、協力してもらいつつ徐々に慣れていった感じですね。スタッフの年齢層も幅が広いですし、記録をつけること自体は業務としてやってきたことなので、方法が変わることへの抵抗はなかったように思います。」
– 管理方法をアグリノートに変更したことで、それ以前の課題は改善されましたか?
「現場でも記録を確認できるという点は改善されましたね。システムを通じてやりたいことを100%達成できているかというと難しいのですが、課題が見つかった都度運用方法を工夫しながら進めています。スタッフからもっとこうしたらよいのでは?と記録の仕方(記録する内容)への意見が出て気づくこともありますね。
活用という点では、現時点は活用方針を検討しながら、まだ記録を蓄積するフェーズだと思っています。数年分の記録が残ってくると、発展的な記録の利活用ができると考えています。」
翌日の作業内容をあらかじめ登録して、作業指示と記録作成のステップを簡素化。実績も正確に記録できます。
– それでは日々の利活用について伺いたいのですが、アグリノートをどのように運用されていますか?
「記録の入力は作業者が個別に行っています。各自1日の業務が終わり、事務所に戻ってからその日の作業内容を入力しています。」
– モバイルアプリからスタッフ皆さんが個々に記録している感じでしょうか。
「工場での加工との兼ね合いもあり、現場で焦って記録してミスが起こることのないように、事務所でパソコンから入力しています。モバイルアプリは現場で記録を確認する際に使っていますが、スマホでの記録作成はほぼ行っていません。」
– 記録の確認や管理はどのようにされていますか?
「記録確認を担当するスタッフをつけて、定期的に記録の漏れや抜け、粒度を確認しています。管理者としては作業履歴から進捗を見て、次の工程に移る適期(日数)を判断しています。収量、品質などは作業者が細かく見ているものではないので、そのあたりも詳細にチェックしています。記録はいろいろな角度から確認しているので、フィルタリング機能をよく使いますね。」
– 作業の指示はどのようにされているのでしょうか。
「翌日の作業予定を前日夕方までに登録して、翌日朝の段階でスタッフ1人1人がどこで何を行わなければいけないのかを把握できる状態にしています。スタッフが記録をつける際は、使用機械などの変更があれば修正して、実績として保存するだけなので、作業指示と記録作成の簡素化が両立できています。
以前はExcelのシートで作業計画を作っていました。10~15の工程と人の割り振りがわかるものなのですが、スタッフもイレギュラーに予定外のところを作業することも多いので管理がしづらく大変でした。」
全体の作業フローを理解するために、工程別の作業進捗と次の工程については全員が進捗画面で把握しています。
– 記録の内容についてはいかがでしょうか。注意しているポイントなどはありますか?
「弊社は有機JAS認定を受けているので農薬はほとんど使用しないのですが、農薬と肥料の使用内容は正確に記録するよう気をつけていますね。土壌診断も毎年行っていて、施肥設計の内容も変わるので、作業記録として【肥料配合】の実施も記録しています。」
– さきほど「記録データを蓄積している段階だ」とおっしゃられていましたが、今後のデータ活用を意識して細かく記録されているのですね。記録内容をスタッフの皆さんはどのように確認・共有されていますか?
「作業工程別の作業進捗(作業実施済の割合、進行度の確認)と、次の作業工程については全社員が把握するよう心がけています。
特に若いスタッフには積極的に確認するよう指導しています。全体の作業フローを理解してもらうために、記録の確認を通じて自身がどのような作業を行っていて、次にどんな作業を行う必要があるかをチェックしてもらっています。
アグリノートは進捗画面がとても見やすいので、すぐ理解してもらえていると思います。」
いずれは自園のみならず、系列農家の栽培データも集約管理できたら。情報を共有し、必要に応じてサポートできるのが理想です。
–それでは、今後はどのようにアグリノートを使っていきたいと考えていますか?
「土壌診断結果をはじめ、さまざまなデータを圃場別、作型別、年別などで比較分析し、栽培のボトルネックになっている要素を可視化したいですね。5年ほど記録が蓄積されたら、過去の同時期の状態や天候状況と比較して検討してみたいです。
ゆくゆくは自社の120haの管理に加え、600件ほどいる契約農家さんにもアグリノートを使ってもらって、一元管理できたらいいですね。契約農家さんと肥料や農薬、病害虫の状況などを共有して、必要に応じて指導などのサポートができればと思っています。電話や紙でのやり取りからデータ管理・連絡を通じて、地域がまとまって発展できるのが理想ですね。」
– 契約農家さんを含め集約管理を目指されていると。
「蓄積された記録は宝だと思います。振り返りなくして次の栽培計画は考えられませんから。契約農家さんもそれぞれ何らかの形で記録をつけられていると思いますが、振り返りがしやすいデータとして残っていることが大事だと思います。弊社も今後は各種認証のための帳票作成をアグリノートに記録したデータで行う予定です。」
– 今後の展開が楽しみです!本日はお時間をいただきありがとうございました!
(取材:2021年6月11日)