過去の収穫記録と生育記録をもとに収量予測の精度が向上。適切な人員計画にもつながり、人員確保に困ることがなくなりました。
山形県寒河江市株式会社芳賀にこにこ農園
この事例のポイント!
- 栽培記録が一元管理でき、複合経営でも明確な状況把握と共有が実現
- 記録をもとに収穫時期・収量を予測。商談と人員計画に活用
- 記録を振り返り技術普及課と共有。指導内容に基づき来期計画を策定
水稲・果樹・花卉の複合経営をアグリノートで効率よく管理。圃場の把握から始まった管理も今では商談、来期の計画まで、活用の幅はますます広がります。
今回ご紹介する芳賀にこにこ農園様は、山形県のほぼ中央に位置する寒河江市の複合経営の生産者さんです。出羽三山で有名な月山、朝日連峰などの山々に囲まれた自然豊かな寒河江市は、日本一のさくらんぼの里としても知られています。
芳賀にこにこ農園様もさくらんぼを栽培されていますが、ほかにも水稲に桃、花卉など複合経営されています。
アグリノートを導入して以来、研修会等にも積極的に参加し、利活用の幅を広げられているとのこと。さまざまな作物の栽培の記録を管理するポイントや記録の活用について、花卉を中心に担当されている芳賀あゆみさんにお話しをお伺いしました。
作目別に記録と管理を分担。アグリノートなら記録を共有できるから心配ありません。
– いつもSNSを楽しく拝見しています!たびたびアグリノートを取り上げていただいてありがとうございます。
「見ていただいてるんですね!なんだか恥ずかしいですね(笑)。」
– 芳賀さんのアグリノートの活用内容をお聞きできるのを楽しみにしてきました。どうぞよろしくお願いします。それでは早速ですが、アグリノートを導入するきっかけから教えていただけますか?
「直接的なきっかけは山形県主催のやまがた農業経営実践塾での講義を通じてアグリノートを知ったことになります。それまではエクセルや手書きの地図で管理されていて、小さな圃場が街中に点在している上に枚数も多く、2020年に就農した私や新しく入ったアルバイトの方は圃場の場所がわからずとても苦労していました。そんなときにアグリノートを知り、困っている私たちを見かねた主人が導入を決めました。アグリノートを導入してからは圃場がどこにあるのか把握できるようになりましたし、年々圃場や作目が増えても一元管理できて、圃場管理の課題はクリアになりました。」
– アグリノートの導入の背景にご主人様の愛を感じますね(笑)
「そうですね(笑)。圃場管理だけでなく、GAPに対応している点や収支の確認ができるという点もいいなと思っています。」
– GAPの取り組みでも活用されているということでしょうか。
「農場としてはGAPの認証は取得していませんが、夫がGAP指導員の資格を取得しているので、販売先から求められればいつでもGAP認証取得に取り組めるような管理体制を作っています。
さくらんぼ栽培では短期アルバイトの方が多いので、怪我をさせないための安全対策もGAPにならって行っています。アグリノートでGAPに対応した管理ができるのもありがたいですし、立て看板機能をうまく使えば安全対策の周知もできるので助かっています。」
– 導入当初の課題だった圃場管理をクリアされて、管理の幅が広がっていますね。管理したいことを明確にお持ちだったようですが、他の営農管理システムと比較検討はされましたか?
「最初からアグリノート一択でした!今ではアグリノートがないことが考えられません!!」
– 一択で選んで手ごたえを感じていただけて良かったです。私たちも励みになります!
作付ごとの栽培計画をもとに繁忙期が重ならないように調整する。複合経営だからこそ、進捗の共有とすり合わせが重要です。
– 日々の記録と管理についてお伺いしたいのですが、水稲、果樹、花卉の3品目の複合経営を、それぞれどのように管理・運用されていますか?
「水稲・果樹については夫が、花卉については私が管理しています。花卉は品目の選定を慎重にすることで作業時期に融通が利きやすいので、他の作物と作業時期が被らないように注意しています。作付ごとに栽培計画を比較して、作業時期が重ならないようにアグリノートを見ながら夫と相談して調整しています。
作業の進捗や生育状況のすり合わせも週に一度していますが、その際もアグリノートの記録を軸に認識合わせをしています。」
– 一日の中でアグリノートはどのように使われていますか?
「朝に一日の作業場所をマップで確認してから作業に取り掛かるようにしています。アグリノート導入前は、夫の頭の中にある作業内容が共有できず、段取りが悪かったのですが、アグリノートを使うようになってからは段取り良く作業できるようになりました。
また、家に帰ると家のことをしなければならないので、日々の記録付けは現場でアプリから入力して完結させるようにしています。モバイルアプリだと現場で写真を撮ってそのまま記録として残せるのがいいですね。」
– 芳賀さんはさくらんぼなどの果樹も栽培されていますが、記録・運用する上で何か工夫している点はありますか?
「そうですね。果樹の中でも特にさくらんぼについては運用方法を工夫しています。さくらんぼは品種を問わず収穫時期が同じで作業のタイミングも重なるので、品種別ではなく、今年のさくらんぼ(例:作付名「さくらんぼ2023」)として作業記録をつけています。ただし、収穫(収穫日、収量)と出荷内容については品種ごとに管理したいので、品種名ごとにも作付を設定しておいて、収穫から出荷までは品種別に記録しています。必要な情報は十分に蓄積できていますが、この管理の仕方はさくらんぼだからできるやり方なので、他では応用できません。他の果樹についても適切な管理の仕方を検討したいと思っています。」
– 樹1本ずつのような点での管理はアグリノートの弱い部分でもあるので、改善を検討していきたいと思います。これからも現場からの声としていろいろお聞かせください。
過去の記録と生育記録により予測も明確に。収穫時期、収量、さらに人員の確保まで、データを有効活用しています。
– アグリノートを導入して、経営面で変化したことはありますか?
「さくらんぼの商談の際にデータを活用しています。さくらんぼの収量は霜害が起こると乱高下するので、商談の際にどれくらい出荷できるか聞かれることがあります。その際にアグリノートを見て説明すると、状況が正確に伝わって話しやすくなります。」
– データに基づき商談を円滑に進められるようになったんですね。具体的にはどのようなデータをもとにしていますか?
「過去3年分の収穫・出荷記録や生育記録を参考にしています。生育記録の写真(蕾の状態など)から生理落下する粒数と製品化する粒数の収量予測を立てて、そこからいつぐらいに収穫できそうかを算出し、出荷量と収穫時期を予測しています。」
– なるほど。人員確保にも活用できているんですよね。
「はい。収量と収穫時期の予測に合わせて、作業に必要な人数も算出できます。収穫時期には地域内で人手の取り合いになってしまうので、収穫期の1ヶ月〜1ヶ月半くらい前には予測を元に人の手配を進めます。」
– 収穫時期と収量の予測から人員予測が繋がりましたね!
「アグリノート導入前はさくらんぼの収量予想がぼんやりしていて、『収量が多そうだから、このくらい人を配置した方がいいかな?』と判断もぼんやりと自信がありませんでした。今は『この作業には10人くらい必要!』とデータを根拠にした数字で説明できます。精度の高い予測を立てられるようになって人員を確保しやすくなりました。全てはアグリノートの生育記録が起点になっています!」
記録がきちんと残っているから自己分析できる。結果を山形県農業技術普及課と共有し、適切な栽培指導が受けられます。
– 県の普及課さんとの連携や栽培技術向上への取り組みについてお聞かせください。
「ぜひPRしたいのですが、山形県の普及指導員の方々は現場のサポートがとても手厚いんです!いつも普及課の先生には現場指導にご尽力いただいて助かっています。花卉については品評会での受賞を目標に頑張っているので、栽培期間中に困ったことがあれば現場の状況を見てアドバイスをもらったり、その時の指導内容は記録のメモ欄に残すようにしています。
作付計画を立てるときにこのメモを見直して、出荷の記録から等級品質の実績を眺めながら、施肥設計や防除計画(栽培計画)に反映しています。」
– 普及課さんと経営改善を目的にデータを確認することはありますか?
「記録データをダウンロードして、作付ごとのサマリー(年間の記録を振り返っての総括)を作成して、先生と年間の振り返りをしています。
例えば、出荷記録から出荷先別数量や金額を出力したり、作業記録から各作業にかかった時間を算出したり、課題がどこにあるのか一緒に考えています。」
– 指導内容を栽培に活かすこと、さらに記録をもとに経営改善につなげる流れができていますね。他にも活用できていると感じていることはありますか?
「田んぼは枚数が多く、関係機関に提出する書類も多いのですが、その書類作成にアグリノートの圃場情報や栽培履歴を活用することで事務作業の負担が減りました。
それから、作目ごとに管理を分担していても、出荷先からの問い合わせに誰でもすぐに回答できるようになりました。アグリノートを見れば誰でもわかる、情報共有のメリットの一つだと感じています。」
– 最後にアグリノートへのご要望や、今後の展望などをお聞かせください。
「機械と作業者の記録が連動できるとさらに便利だと思います。帳票データを円滑に入力できるような機能もあれば嬉しいですね。今は私と夫だけがアグリノートを使っていますが、いずれは従業員にも使ってもらおうと考えています。
アグリノートへの記録は、いつか引き継いでくれる次世代のためでもあります。データ化された栽培履歴は次世代に経営を承継する際にきっと役に立つはずです。私たちの栽培技術を次世代に引き継げるように、という思いで日々頑張っています。」
– 大切なお話をたくさんお聞かせいただきありがとうございます。お忙しい中お時間をいただきありがとうございました!
(取材:2023年4月17日)