自動記録機能で記録作成の時間を短縮!記録を分析し、根拠に基づく労働生産性の向上に挑戦しています。
鹿児島県指宿市株式会社hishi
この事例のポイント!
- JGAPの取得にアグリノートの「立て看板」と「栽培計画」を活用
- 自動記録機能を使って記録作業の負担を削減。作業効率が向上
- 記録を分析した結果をスタッフと共有。モチベーションと生産性の向上につなげる
キャベツなど多品目を年間2~2.5回作付する現場を支えるのは、アグリノートの自動記録機能だった!?
鹿児島湾が目の前に広がる薩摩半島の最南端の街・指宿市で、キャベツをはじめ多品目を手掛ける株式会社hishi(ヒシ)様を訪ねました。自動記録機能についてたびたびご質問をいただくことがあり、記録の効率化や現場改善にどのように取り組まれているのか、ぜひお聞きしたいと思い取材をお願いしました。
聞けば「スタッフに夢とやりがいを持たせられる会社であること」を経営理念されているとのこと。スタッフへの思いとアグリノートの活用がどのようにつながっているのか、代表の菱田さん(写真:右)と従業員の飯塚さん(写真:左)にお話しを伺いました。
自身の経験とそのとき感じたことから、スタッフを大切にする「雇用を中心とした新たな農業の働き方」を実施しています。
– 本日は取材をお受けいただきありがとうございます。はじめにhishiさんについてお伺いできますでしょうか。
「はい。私の実家が農家なのですが、継ぐかたちではなく様々なめぐり合わせで独立して1人で農業をスタートしました。当初は1haほどを本当に1人でやっていましたね。自信と勢いでなんでもチャレンジしていく中で、徐々に従業員雇用を始め、28歳の時にhishiを立ち上げました。その6年後には地元の知人と一緒に、近隣の農家さんが栽培したキャベツの収穫・出荷を受託する農事組合法人も設立しました。」
– 今は幅広い作目を栽培されているようですね。
「現在キャベツをメインに、レタス、にんじん、さつまいも、オクラやカラーピーマンなどを栽培しています。圃場数で言えば、100枚ほどで年間2~2.5回作付するので、作付総面積は30~40haほどになります。」
– キャベツをメインに選ばれたのには、深い理由があるそうですね。
「はい。以前はレタスを中心に栽培していましたが、スタッフの労務や雇用の安定を考えた結果としてキャベツが主軸になりました。
例えば、レタスはダンボールでその日中に出荷しなければなりませんが、雨の日は作業ができません。そのためスタッフには時間をずらして作業をさせたり、残業させるなど、負担をかけていました。キャベツは冷蔵庫で保管ができるので、そういったことがありません。
私自身、農業を始めて一番嫌だったのは休みがないことでした。雇用を始めた当時は10代の若いスタッフも多かったので、自分自身の経験から『給料もほしいけれど、休みもほしいだろう』と思ったんですね。スタッフに満足して働いてもらうためにもホワイト企業を目指そう!ということで、雇用を中心に経営全体を考えています。
もちろん売上の観点でも、欠品を出さない仕組みづくりや、キャベツを基盤とした空白のタイミングに何を作付するかなど、年間を通して様々な作目を試行錯誤するなかで、徐々に今の作目体系になっていきました。」
– 雇用を中心に作目を変えるといったお話しは、あまり農家さんから聞かないので驚きました。皆さんのイキイキとした表情が成果を物語っていますね。続いて、アグリノートを導入するきっかけについて教えてください。
「実は最初に利用したのは別のシステムでした。色々と分析ができるシステムでしたが、その分記録項目が多く手間もありました。正直活用しきれていないと感じていたところアグリノートを知り、とりあえず作業日報を記録することからスタートしてみようと思ったのがきっかけです。」
– システムを切り替える不安や負担はありませんでしたか?
「今後様々なシステムが出てくるだろう中、システムの切り替えには不安や負担も確かにありました。でもアグリノートはその当時かなりシェアを取ってきているな!(笑)という印象でしたし、使用感がとても良く、使いやすいと感じました。あと一番大きかったのがアグリノートを始めたタイミングで、出荷先の企業から取引条件としてJGAPを必須にするとの連絡があり、本格的にアグリノートを活用していこうと決断しました。」
急務となったJGAPの取得!アグリノートでの記録の付け方を工夫して審査に対応し、以来そのまま社内マニュアルとして運用しています。
– なるほど!JGAPの取得にも、アグリノートを活用いただいたんですね。
「最初は1名のスタッフが全員分の記録を付けていましたが、ただ記録するだけでそれ以上の活用には至っていませんでした。JGAP取得に向けて動くことになった時、お付き合いのあった農機メーカーさんから『アグリノートを使っているなら、こういうやり方でJGAPの管理ができるよ』とアドバイスをもらったんです。」
– 具体的にはどのようにJGAPに沿った管理をされていますか?
「一番活用できているのは【立て看板】ですね。デジタルのマップ上で畑の危険箇所を目印に管理できるのは、随時変化する情報含め、常にスタッフと共有できる大きなポイントです。
その他には、栽培計画で農薬を設定し、計画として登録できることも審査の際には重要になっています。ちなみに、キャベツであれば当社の基準として10a当たり150ℓとして登録しており、これらの情報を審査時に画面をパッと見せてスムーズに説明できることに非常に価値を感じています。」
– 立て看板を使うコツなどあれば教えてください。
「立て看板のアイコンは種類が豊富ですが、統一された設置ルールがないと煩雑になってしまいます。弊社では、よく使うアイコンに対しそれぞれ固有の意味や役割を持たせています。
例えば[!]というアイコンは事故に注意な場所、というように、使用するアイコンを決めています。そしてマップ上の海の上にアイコンを設置して、その意味や活用シーンを記載して一覧化しています。マップ上にあっていつでも確認できるので、誰でもその一覧を見てルールに沿って看板を立てられるようにしています。」
自動記録機能を使って記録作成の負担を軽減。記録づけを負担に感じないことも、スタッフのモチベーション維持に影響します。
– アグリノートの使い方に対するルールをしっかり設定して使っていただいているのはとても印象的です。ルールをスタッフの皆さんにどのように周知していますか。
「ルールをマニュアルにして共有しています。いくら便利なシステムでも万能ではないですよね。自分たちのやり方に合わせて、その仕組みや機能をどう使っていくのか、調整が必要だと思います。マニュアルとしてルールや手順、それらを設定した意図も合わせてしっかり共有することで、みんなに理解してもらい、さらなる改善にも役立っていると思います。」
– さらに細かく、hishiさんの1日のアグリノートの利用の流れを教えてください。
「毎日朝礼でスタッフ全員が集まります。そこで今日一日の流れを説明するのですが、その説明が終わるとスタッフが各自スマホを出して、自動記録機能の開始を押してそれぞれ現場に向かいます。一日の農作業が終了したら、自動記録の終了ボタンを押します。作業後に自動記録で作成された下書きを確認しながら、実績として登録して業務終了となります。」
– まさに自動記録機能の理想的な使い方を実施いただいていますね。具体的にどんなところに便利さを感じてもらっていますか。
「本当に便利で役立っていますよ!圃場が100枚ほどあって作目も多様なので、一日の中で複数の圃場に対して様々な作業を実施します。ですから、一つひとつ作業項目を選んで、圃場を選択して、作業にかかった時間を入力するのは本当に手間だと思うんですよね。その手間をそっくりそのまま解消してくれる仕組みだと感じています。」
– それはまさに私達が自動記録機能で実現したかったことです!
「実際に使ってみて改めてそう思いますね。JGAPの管理でも日々の正確な記録が重要で、記録する作業が増えれば増えるほど余計な仕事に感じてしまい、スタッフのモチベーションが下がります。そのストレスをできるだけなくして、モチベーションを維持・継続させるための重要な役割をこの自動記録機能は持っていると思います。ただ、記録の精度は100%とは言えないので、さらなる精度の向上にアグリノートさんにも頑張ってほしいですね!(笑)」
– ありがとうございます!頑張ります!
記録データをもとにスタッフとコミュニケーションする。根拠を共有することでスキルアップにもつながります。
– 日々の作業記録のデータをどのように活用されていますか。
「記録データは様々な分析に活用しています。現在弊社も参画しているコンソーシアムのパートナーと一緒に、産地育成などをテーマとした、横展開できる事業モデルを構築しています。その一環として、アグリノートで記録したデータを経営的な観点から見える化して、特定の圃場でどの程度時間がかかっているのか、1時間あたりの生産性はどうか、といった課題について目標値を設定し、どの程度達成できているかを独自で作成した専用のスプレッドシートで管理・分析しています。」
– 分析した結果をどのように活用されているのでしょうか。
「3~4年前ほどから、私自身は一部の作業以外現場には入らず、主任に現場作業の指揮をほぼ任せています。作業時間や内容などある程度の予測はつくのですが、予測通りにならないパターンも出てきます。通常この圃場では1000ケース収穫できるはずが、500ケースしか収穫できていなかったという場合、病害虫などの外的要因ももちろんありますが、人的な要因が原因になるケースもあるので、現場スタッフと話をする時には、アグリノートに記録した作業時間や内容を分析した結果を根拠として話しています。」
– 話しの根拠が明確なことで、スタッフの納得度はかなり高くなりますよね。
「そうなんです。目標値を設定することで、
① この圃場(面積)なら、どのくらいの時間をかけて良いのか明確になる
② 収量の良し悪しの判断が明確になる
③ 目標値に対して作業実績からそれらに紐づく要因を紐解いていく
このように改善の流れを作り、スタッフと根拠を共有して議論をすることで、スタッフの教育とスキルアップに繋げていければと考えています。」
– 雇用を中心とした経営においても、様々な分析データの活用が生きていますね。
「根拠をもってスタッフと話をすることで課題に柔軟に対応でき、モチベーションの維持、ひいては働き易さも生まれてくると思います。今後は、アグリノートの記録とそのデータを活用した分析から、1時間あたりの生産性などをスタッフにフィードバックしていきたいと思っています。
生産性に関しては、アプリの圃場までの案内機能もとても便利です。社暦が浅いスタッフでも、道案内を使って圃場を間違えず作業できますし、自動車や機械での移動にも時間とガソリン代がかかりますから、時間あたりの生産性を向上していくためにも重要な機能だと思っています。」
– ありがとうございます。それでは、アグリノートへのご要望をお聞かせください。
「記録データの活用のためにスタッフ全員の記録を毎日出力しているのですが、出力する期間が今日からさかのぼった過去1年間の期間でデフォルト設定されているので、毎回修正するのが面倒です。そこを変えてほしいです。
あと、カレンダーを月間表示で見るとき一日の記録項目が多いと、スクロールしないと見たい記録が見えないのが不便に感じます。特に出荷記録が大事なのですが下の方に表示されてパッと見えないので、見やすく表示してもらえると嬉しいです。
アプリでは、スマホで全体の作業記録を見る画面で、特定のスタッフを選択して個人の記録を見られるようになると嬉しいです。作業内容を修正したりするときに一人ずつ探さなくてはならないのが手間なので、絞り込みができるといいですね。
最後に、やっぱり自動記録の精度をさらにあげてほしい!というのは切なる願いです。とても良いシステムだと思っていますし、改善の元となるデータを取得する大切な役割を担っているので、精度が向上すれば更なるデータの活用と作業効率の改善が期待できると感じています。さらに、自動記録を使っているスタッフの位置情報や一日の移動距離などのデータが取れるともっと面白いと思います。ぜひ機能拡充してもらいたいですね!」
– 更なる機能の拡充に尽力いたします!最後に、今後の展望をお聞かせください。
「現在、実施中の実証事業に加え、アグリノートから生まれるデータを活用した経営改善手法を確立し、農家さんの課題を解決できるようなコンサルに力を入れていきたいです。各々の農家さんのスタイルを尊重しながら、取るべき戦略のアドバイスをしたり、集出荷のお手伝いができればと考えています。簡単にいうと、小さな農協みたいなイメージですかね。
まずは、弊社がモデルとして仕組みを確立して、多くの農家さんの課題を解決していきたいと思います。」
– 貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!
(取材:2023年7月13日)