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農機連携から生まれるデータと細かな記録をもとに、検証・改善を繰り返すことで売上の向上に繋がります。

この事例のポイント!

  • 経営判断につながる記録はまさに財産!細かな設定と記録作成で収支も把握
  • 農機連携を活用し、作業と記録づけを効率化。データの一元管理で生産性も向上
  • 記録を見返しながら行うPDCAサイクルで売上向上も実現

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井関農機「ISEKIアグリサポート」のデータ連携を最大限に活用。記録を元にPDCAサイクルを回すことで、売上の向上が実現できています。

広大な越後平野が広がる新潟県新潟市で、水稲や大豆、麦を栽培する有限会社米八(こめはち)様は、農機メーカーアプリやシステムを活用したスマート農業を率先して取り入れています。井関農機の「ISEKIアグリサポート」とアグリノートの連携を通じて、アグリノートの利活用がどのように変わったのか、またどのように管理・運用されているのか、代表の加藤さんにお話しを伺いました。

スマート農業は本当に必要?疑問からスタートしたアグリノートの利用

– 本日は米八さんの井関農機「ISEKIアグリサポート」連携などをふまえたアグリノートの活用内容をお聞かせいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
米八さんには実証事業に参画いただくなど、日頃より大変お世話になっております。まずはアグリノートと出会うまでの経緯を伺えますか。

「私は元々別の職業についていましたが、農業に携わったときに同じことの繰り返し感を強く感じてしまって。同じことを繰り返しても面白くないと思っているので、毎年新しいことに挑戦しています。そんな中でスマート農業という言葉が出てきて、当時は別にパソコンやスマホがなくても農業はできると思っていたので、本当に必要なのかと(笑)。
 
最初は疑問を持っていたところ、実証事業でアグリノートに出会って言われるがまま触ってみたのですが、使ってみるとあれもできるこれもできると便利さに気づいて、これはいいなと思い始めました。それが結果にも現れてきて、使った分だけ収入に影響することが理解できてからは、やりがいや楽しさを感じてどんどんハマってしまいました。」

– スマート農業に疑問を持たれていたというのは初耳だったので驚きました。アグリノートを始めた当初は、どのように使っていましたか。

「実証事業で田んぼの水位データ(※1)が遠隔で見られて、見回りが楽になるという話がきっかけでアグリノートを入れました。ですが、当初は登録した圃場をマップから見るだけの地図代わりにしか使っていませんでした。何かに活用するイメージを持っていなかったので、ほんとにそれだけでしたね。それから数年経った後に新たな実証事業の依頼があって、それをきっかけに栽培記録をアグリノートで付けるようになったのが本当のスタートになります。1年目には単純な作業の記録を付けることから始めて、慣れてきた2年目からは農薬や肥料、資材や人件費などの単価を設定してより細かく記録していきました。」

(※1 実証では水田センサーとの連携機能を利用)

– 実際に使ってみてどのような点でアグリノート導入の効果を実感されましたか。

komehachi_image01 すごく価値を感じたのは田んぼ1枚あたりの収支が見えるようになった辺りからですね。作付ごとに収支をチェックし、思ったような結果にならなければ、品種構成や作付の割合などを変えたりする判断材料になっています。また、現場に出て、あれどうだったっけ?と思い返すときに、スマホでパッと見ることができるのはアグリノートの魅力ですよね。例えば、立て看板機能はトラクターがスタックするなど注意しなければいけない場所の把握や、生育調査をする圃場の目印に使ったり、アグリノートの登録の仕方についての社内マニュアルとして設置して、いつでも誰でも確認できるようにしています。
他にも事務所や作業場を圃場として登録して、農機のメンテナンス作業を記録しています。所有農機も多いので、記録に残すことで見たいときにパッと振り返られています。」

スマート農機連携を最大限に活用。農機から取得したデータは作業改善や収量の向上に直結

– 米八さんには井関農機の提供する「ISEKIアグリサポート」とアグリノートを連携してご利用いただいています。ぜひその点を伺えますでしょうか。

「スマート農機のおかげで農作業がかなり楽になっていますね。直進アシストが最たる例で、田植えの際に精神的な気苦労がかなり軽減されました。そして、アグリノート連携している農機を使った作業を、アグリノートに記録として同期できるシステムはとても便利ですよね!アグリノートに作業記録を入力する手間がぐっと減ります。
 
私の使い方としては、1日の作業が終わって事務所に戻った時に、農機が取得したデータをアグリノートの作業記録として取り込みながら、作業の中で使った農薬や肥料の編集をしています。」

– さらに具体的に、連携利用の内容をお聞かせいただけますか?

「まず田植えの時期ですが、当社では可変施肥田植え機を使用しています。可変施肥田植え機からアグリノートに連携されたデータの中でよく見ているのが、肥沃度や作土深(※2)が表示されるマップです。特に便利なシチュエーションとしては、合筆した圃場に田植えをする際の施肥の調整ですね。自分でも圃場の癖みたいなものはわかっているつもりですが、データとして残っていつでも確認できるのは安心できますし、施肥量の調整から収量の向上に繋げられます。
 
あとは、田植え機を実際に動かした軌跡マップも活用できています。例えば、一般的な四角形の田んぼなら問題ないのですが、三角形などの変形田だと田植え機が変則的な動きになり、空走りをせず効率よく植える順序にはノウハウが必要です。そういった田んぼで効率よく植えるノウハウをスタッフに教えるのは大変ですが、アグリノートに登録された軌跡データを新たなスタッフに見せることで一目で伝えることができます。田植え時期は時間との勝負でもあるので、1年前の記憶を頑張って蘇らせるような無駄な時間を発生させないためにも、アグリノートに連携しているデータを記録として振り返ることができるのは便利ですね。」

(※2 肥沃度:植物の生育を維持する土壌の能力。可変施肥田植え機が土壌中のイオン量を測定し、イオン量が多いほど肥沃な土壌と判定する。作土深:地表からの深さを指す。)

 

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– 収穫のときはいかがですか。

「収量コンバインもアグリノートと連携しており、圃場ごとの収量データがアグリノートに記録されます。収量コンバインで取得できるデータとは別に稲の倒伏状態の登録をすることができて、収量データと倒伏状態をマップで重ねて見ることができます(※3)。これをその年の可変施肥データと合わせて見ることで、翌年の可変施肥田植え機の減肥率を調整する精度が上がっていきます。収穫量と倒伏状態による減肥率の調整方針はマップに色でわかりやすく表示されているので、それに沿って翌年の計画を考えています。

収量データは収入に直結してきますので、毎年の収穫量はもちろん、収穫量を左右する施肥の記録や作業タイミングなど、様々な記録がアグリノートで振返られることによって、何が良くて何が悪かったのかを確認することができます。これらアグリノートの記録は、今では欠かすことに出来ないモノになっています。」

(※3アグリサポート連携独自の機能として提供)


komehachi_image03(可変施肥全体イメージ) 肥沃度で色分けされたマップ画面  ※イメージ

細かく記録を残すことが検証・改善につながる!運用の工夫で田んぼ1枚あたりの収支を見える化できています。

– 連携機能をとても有効に活用されていますね。

「なるべく細かく田んぼ1枚1枚のデータを記録することで、最終的な結果の解像度が上がり、翌年の栽培の際により具体的で成果の見込める改善につなげることができると思っています。 今では田んぼ1枚あたりの収支も見えるようになりました。」

– 田んぼ1枚あたりの収支を把握する上で、他に工夫されていることはありますか。

「作付設定を[育苗期]と[移植後の本田]で分けて設定しています。具体的には、育苗で使用する農薬や肥料、資材をマスタに登録し、それぞれの単価を設定します。その後、「品種名_育苗_年度」といった形で作付設定を行い、日々の作業記録を付けていきます。こうすることで育苗期にかかったコストがアグリノート上で集計され、収支管理画面で確認できるようになります。育苗期にかかったコストをでき上がった育苗箱分で割ると、育苗箱1箱分のコストが算出できます。その育苗箱1箱分のコストを資材として新たにマスタ登録し、本田での田植え作業で使用した育苗箱の枚数を記録します。これが育苗にかかったコストを本田の作付に計上する方法です。」

 

komeichiba-image04(米八事例_圃場単位のコスト把握手順)

「また、収穫期には乾燥機に入れた後のデータもアグリノートに記録しています。乾燥機に入れてできた玄米に対し、くず米が何kg出たといったデータを収穫記録に登録する他にも、乾燥機に表示される水分量などスマホで撮影して記録に添付しています。これらを見返すことで改善につなげることができます。
 
このようなやり方で、育苗も含めた田んぼ1枚のコストと収穫量を算出して、最終的な田んぼ1枚あたりの収支を見ています。余談ですが、アグリノートが乾燥機のシステムと連携してもらえると、もっと効率よくデータが取得できるのでぜひ検討してほしいですね(笑)」

記録されたデータを活用して改善の繰り返し。さらに向上していくサイクルを構築しています。

– お話しをお聞きしていると、農機連携を使いながらさらに細かくデータを記録して、振返り、改善するというPDCAのサイクルが完成していると感じました。サイクルを回す上で重要なポイントは何でしょうか。

komehachi_imaage05 一最終的な収支を確認するために、できるだけ細かくしっかりと記録することを心掛けています。春から秋の栽培記録に加え、収穫・出荷を記録して収支を確認する。冬にはそれら実績データの振り返りをして、思ったような結果にならなければ品種構成や作付の割合を変更するなど、記録を基に翌年の計画を立てて、常に改善を繰り返しています。アグリノートで記録を付けていくと様々な課題が見えてきて、さらに良くしていこうと思えるし、必ず結果が出てきます。だから記録を付けていけばいくほど楽しくなってくるんです。自分で言うのもなんですが、もうこれ以上ないんじゃないかな、と思うくらい記録してますね(笑)」

– アグリノートに記録があるからこそ、毎年が同じことの繰り返しではなく、改善サイクルを回していけるということですね。

「農機連携やアグリノートで溜めたデータを振り返り、さらに良くするためのサイクルを回し続けることで、売上の向上に直結していると感じています。品質が良いものを作るのはもちろんですが、経営の観点からは売上が一番大切ですし、そこを良くしていくことに強い思いもあります。改めて、改善サイクルの基盤になる蓄積したデータはまさに財産だと思っています。」

スマート農業の効果を実感。蓄積したデータを基盤に、新たなチャレンジに繋げていきます

– それでは、アグリノートの農機連携に対し、ご要望などはございますか。

komehachi_image06 「ん~、これ以上ないんじゃないかなとも思いますが、最近だとドローンや後付けの自動操舵機、土地の高低差をデータとして見える化したものも、アグリノートに同期されると便利かなと思っています。ドローンは今使っているモノに全てのデータが入っているので、すぐにでも連携できるといいけどなぁ(笑)。
農機連携ではないですが、アグリノートで登録した圃場データを他のシステムに入れられるといいと思いますね。」

– 様々なシステムとの連携は、アグリノートとしてもテーマの一つです。いただいたご要望含め、検討していきたいと思います。今後スマート農業にどのように取り組まれたいと思いますか?

「やっぱり、スマート農機は自分でやるよりも正確ですし、農薬・肥料の使用量に無駄がないですよね。自分が手でやった作業と記録を見比べてみると、今まで結構無駄な量を撒いていたなと気付くことがありました。これは記録を付けておかないと気付けない部分かもしれません。改めてスマート農業の便利さを実感しました。
 
今後離農される方が増えることを予想すると、当社で管理する圃場も増えてくる可能性があります。そうした時に現在の従業員数だけではできる範囲が限られるので、より広域の圃場管理を見据えて農機連携などのスマート農業のシステムを活用して、農作業の負担軽減に取り組んでいきたいと思っています。そして、それらが実現できる様々なシステムが出てくることにも期待しています。」

– 最後に、米八さんの今後の展望をお聞かせください。

「理想は農作業全部、機械にやってもらいたいという気持ちはありますが(笑)、それはないにせよドローンや自動操舵・ロボット技術とうまく融合させた、農作業の効率化・負担軽減になるスマート農業の導入は引き続き進めていきたいと思います。
新たなチャレンジをする時には、アグリノートでデータや記録が一元管理できることがその先に繋がっていく基盤になります。アグリノートには様々な農機と連携してもらい、農業関連データをとりまとめるプラットフォームツールになってもらいたいですね。期待しています!」

– この度は、貴重なお話をお聞かせいただき、誠にありがとうございました!

(取材:2023年8月10日)

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