グループ全体で農場の危機管理への意識を共有し、持続的な発展を続けていきたいです。
千葉県香取市株式会社和郷、農事組合法人和郷園
この事例のポイント!
- リスク管理を徹底する意識が高まり、グループ全体で課題への共通認識を醸成
- 長く続く組織づくりのためにアグリノートを活用。仕組みに基づいた管理システム構築が実現
- アグリノートマネージャーと連携でDX化を実現。生産者や取引先とのやりとりがスムーズに
グループ売上100億円を達成した背景には、生産者と管理者の高い意識によるリスク管理があった
独自のビジネスモデルを構築し、日本の農業界で先進的な取り組みを進めてきた和郷園グループ。その裏では生産者と管理者の間でさまざまなリスク管理方法が試行錯誤されてきたそうです。今回はこれまでの取り組みや今後について、生産者グループである「農事組合法人 和郷園」の佐藤理事(写真右)と、和郷園の生産から販売までの管理を行う「株式会社和郷」の佐々木様(写真左)にお話を伺いました。
グループだからこそ、一人の意識のずれが大問題につながる。トラブルから自分たちを守るために問題意識を強く持っています
– それでは、アグリノートを知った経緯から教えてください。
佐藤さん: 「知り合いの農家でアグリノートを使っている人がいて、彼の管理方法を見て『すごいな』と思ったのを覚えています。もう10年以上前だと思います。とはいえ、当時はいろんなサービスの中の一つだと思っていて、すぐにアグリノートを使おうという頭にはなっていませんでしたね。」
佐々木さん: 「アグリノート導入以前は生産者さんに紙ベースで農薬等の記録を残してもらうことから始めました。その後エクセルに変更したのですが、私たち管理側の取りまとめ作業がとても大変で手間がかかってしまうため、管理ソフトを入れようという話はそれまでにも度々出ていました。」
佐藤さん: 「そもそも私たち生産者は以前からいろんな営農管理サービスを試してきたのですが、使い勝手が悪くて継続できないという理由でどれもうまくいかず頓挫していました。しかし生産者としても組織としても、このままの管理体制ではいけないと思っていたので、もっと簡単な方法にしないといけないとずっと考えていました。」
– 和郷グループは生産者・管理者共に管理体制への意識がとても高い印象があります。何かきっかけとなる出来事などあったのでしょうか?
佐藤さん: 「かなり前のことですが一度、農薬の使用について問題が起こったことがありました。当時も必要な農薬散布記録は残していましたが、結果として組織の存続が危ぶまれるような事態にまで発展してしまいました。」
佐々木さん: 「これは後ほど私たちのミスではなかったことがわかりましたが、実際に取引が一時的に停止するなどかなり痛手を負いました。以後同じようなことを繰り返さないために、管理者としてできる防御をきちんとしなければいけないという課題意識を持つようになりました。」
佐藤さん: 「生産者はミスを起こすと一人の問題では済みません。和郷園グループ全体に影響が及ぶことを痛感したことで、取り組むべき課題としての共通認識が育まれていったのだと思います。」
長く続く組織であるために、シンプルでわかりやすくしたかった。条件を明確にすることで組織由来の管理体制へ
– 営農管理ツールをグループ全体に展開しようとすると、熱量の強い方と前向きでない方の温度差が生じてしまうことがあると思いますが、和郷園のみなさまにはそういった空気が一切なかったように思えました。
佐藤さん: 「そう言ってもらえることはうれしいですね。でも私たちからするとまだまだです。」
佐々木さん: 「まだまだですね(笑)。なので、そのために管理のルールをわかりやすく明確にしてきました。」
佐藤さん:「そもそも最初からアグリノートの機能全てを使いこなそうとは思っていませんでした。重要なのは取引先に提出する基礎データとなる農薬と肥料の報告なので、アグリノートを見たときに農薬と肥料の記録に絞ればかんたんに誰でも使えるぞ、と思いました。アグリノートを使ってデータ化できれば管理するスタッフが楽になるので、生産者みんなにやってもらおうと思ったのです。」
– 和郷園の生産者さんから和郷に提案があった時、佐々木さんはどう思いましたか?
佐々木さん: 「実際に使ってみるとダウンロードできるデータが自社で管理したい項目に適合していて管理に使いやすそうだなと思いました。アグリノートを導入し、生産者さんが入力するルールを守ってくれることで、管理スタッフ側の負担を減らす仕組みが作れる見込みが立ったので、グループ全体に導入するという結論になりました。」
佐藤さん: 「和郷園と和郷、生産者側と管理側の二人三脚で歩んでいくのが前提なので、管理スタッフが生産者に情報入力のお願いをするような仕事ばかりしていると、管理スタッフ側のモチベーションが下がってしまいます。かんたんで誰でも使えるというのは生産者側だけでなく、管理側の負担軽減にもつながっています。」
佐々木さん: 「アグリノートでできないことはもちろんありますが、それでも充分使えて満足していますよ。アグリノートを使うことにより、組織で管理できる仕組みができました。」
入力した瞬間に報告完了。毎週の農薬履歴を自分でまとめて報告する作業がなくなり、省力化が叶いました
– まずは生産者の佐藤さんからアグリノートの具体的な使い方について教えていただけますか?
佐藤さん: 「記録の入力はスマホで行い、確認はパソコンからサマリーとして見るような使い分けをしています。作業記録はスマホアプリからつけていて、忙しい時はまとめて記録することもあります。
一方で農薬の記録は作業したタイミングですぐに記録するようにしています。施肥や収穫の量を入力するのは後になって正確な数値がわかってから入力するようにしています。」
– 農薬は必ずタイムリーに入力しているんですね。
佐藤さん: 「じゃないと和郷のスタッフに迷惑をかけてしまうので、農薬を使った後は必ず作業直後で記録しています。農薬の使用記録は紙にも残すようにしていて、事務所に戻った後にも入力忘れがないかを見直します。該当日に防除記録の漏れがないかなど、振り返りをするときにカレンダー機能を使うこともあります。」
– アグリノートの他の画面を見る機会はありますか?
佐藤さん: 「パソコン版で収量の確認画面を見ています。収穫量のデータは自分用の備忘録としてエクセルに入力もしていますが、入力されたデータの整合性をチェックするのに月に一度くらいの頻度でアグリノートを確認します。」
– アグリノートの中で特に便利と感じた点はなんでしょうか。
佐藤さん: 「今まで生産者は毎週、農薬の使用履歴を自分でまとめてFAXかメールで報告する作業がありました。アグリノートだと入力した瞬間に共有されて報告できていることになるので、この手間がなくなりました。これが一番便利だと感じたところです。」
– 和郷園の生産者さん全員が同じように省力化できているということですね。
佐々木さん: 「そうですね。生産者側は入力さえ欠かさなければ良いので省力化になり、私たち管理者側は管理しやすい仕組みになりました。」
アグリノートマネージャーと連携することで、タイムリーに生産者のことがわかる!DX化が実現し、取引先とのやりとりがスムーズになりました
– それでは管理側の佐々木さんにお伺いします。生産者グループのみなさんがアグリノートを使っていることのメリットはありますか?
佐々木さん: 「アグリノートはCSVデータで出力できるのでいろんな管理手法に落とし込みやすいのがメリットだと感じています。データを活用する際には個別に加工する必要がなく簡単になったので、和郷の管理側にメリットは多くあったと思います。
先ほどお話しした通り、農薬の使用状況などの進捗はアグリノートを見るだけで良くなったので、FAXやメールなどの確認作業が減りました。
あともう一点、各生産者さんの圃場の場所がスマホでわかる。これは意外に便利です。私たちは生産者の圃場巡回を定期的に行っているのですが、アグリノートの圃場マップを見れば迷わずに行けるというのは利点が大きいです。播種や定植などの生育情報も記録してもらっているので、次の出荷はどこの圃場なのかが把握でき、その圃場に向けて巡回ができます。」
– 和郷にはアグリノートマネージャーも導入いただいていますが、いかがでしょうか?
佐々木さん: 「生産者の履歴を見るのに使わせてもらっていて、非常に便利だと感じています。特に生産者のことがタイムリーにわかること。例えば農薬の入力がされたので、今日散布したんだなというタイミングがわかるのは安心材料になります。
弊社の場合、特別栽培農産物の取り扱いもあります。同じフォーマットのデータに集約できているからこそ、計算式の落とし込みや資料作成が非常に楽になっています。
また、取引先様に提出する資料でもデータをそのまま使用できるものが多いので、アグリノートマネージャーを使用して管理側の負荷というのはかなり削減されたと思います。
ただ、アグリノートに入力されていないと何もわからないので(笑)、管理側では入力の習慣化という課題をどう解消していくかに注力すれば良いというのもありがたいですね。」
– 和郷のような集荷業者さんにおすすめするのであればどんなところですか?
佐々木さん: 「産直団体に対しては、管理者側として同じフォーマットでデータがまとまっていることで、自分たちの取引先様に対してのデータ処理がスムーズになるのでそれはすごくおすすめです。」
– グループ全体でのDX化が推進できたと。
佐藤さん: 「そうですね。また他の集荷組織で生産者自身ではなく、管理スタッフが作業記録や農薬履歴を入力していると聞いたことがあるのですが、それだと運用は難しいと思います。生産者自身がやらないと意味がないですし、頓挫してしまいますよ。」
– 生産者の報告と現場の成長具合の確認がスムーズに行えるということですね。
和郷園以外の生産者にも、リスク管理の面からアグリノートを推奨していきます!
– それでは、アグリノートへの要望・今後の展望などありましたらお聞かせください。
佐藤さん: 「同じようなアプリはたくさんあると思うんですけど、できればアグリノートがトップになって、日本中に普及してほしい。と言うのも、取引先様に合わせて提出書類のフォーマットを変えないといけないことが多々あります。これがもしアグリノートを基準とした管理システムが普及すると我々としては嬉しいのです。アグリノートを導入すれば、生産から管理まで全て完結できる姿を期待しています!」
佐々木さん: 「細かいところでいうと、特別栽培農産物の扱いもできると嬉しいですね。」
– ありがとうございます。それでは最後に、和郷園グループとしての今後の展望を教えてください
佐々木さん: 「今は和郷園の生産者を中心とした野菜販売を行っていますが、これからは和郷園生産者外の野菜を取り扱うことが増えてきますし、実際に増えてきているんですね。和郷園生産者外の人たちにも、リスク管理の面からアグリノートを推奨していきたいと考えています。」
佐藤さん: 「これからも使っていくので、協力しながらより良いサービスになってほしいですね(笑)」
– ぜひよろしくお願いします!この度は貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました!
(取材:2025年2月6日)